待合室
1 剥き出しで手渡しされた診断書の乱れた文字がわたしを騙る 2 看板の「人に癒しを」看破する最近視力の下がったまなこ 3 金魚鉢 待合室の人々は加速度を上げ破滅へ向かう 4 癒す人癒される人それぞれの気が済むまでが苦しい…
1 剥き出しで手渡しされた診断書の乱れた文字がわたしを騙る 2 看板の「人に癒しを」看破する最近視力の下がったまなこ 3 金魚鉢 待合室の人々は加速度を上げ破滅へ向かう 4 癒す人癒される人それぞれの気が済むまでが苦しい…
泣きぬれて色づいてゆく紫陽花よ 虹を待つひとに届くかラブレター 梅雨寒よ寂しさと手を繋ぐ夜 夏の風そろそろ前を向くときか トマトこそ恋をしている子の実り
(1) 皆川先生が亡くなった。その一報をLINEで受けた夜、僕はタブレットにダウンロードした「ニューシネマパラダイス」を観ていた。トトとアルフレッドの熱い友情に名作の呼び声高い映画だが、僕にはいささか美しすぎるように感じ…
1 月蝕を隠した雲の優しさに気づいた人からほどかれてゆく 2 あの蝶があなたのような気がしては右から順に手にかけてゆく 3 動かない時計の針に触れているあなたのために水汲みにゆく 4 好きという呪いがとけてしまっても一緒…
プレリュード移ろいゆくか夏の雲 リグレットつばめよ高く飛んでゆけ 皮膚呼吸フットネイルで思い出す アミュレット摘まれる前に散るかりん アンテナが手折られていま入梅か
1 阿佐ヶ谷の次は荻窪 正しさはレールの上の幻想として 2 生き方のハウツー本を手に取って泣けてきたなら間違ってない 3 今踏んだ蟻にも命があったことちゃんと忘れて生きてゆきます 4 線路から飛び立った鳩 間に合った鳩 …
しとしとと雨の降る夕まぐれには、決まって彼のことを思い出す。彼はこういう日にこの喫茶店に来ると、いちばん窓際の席に座って、ずっと外を見ていた。雨だれがガラスに打ちつけるのを寂しげに、しかしどこか楽しそうに眺めていた。 彼…
柔らかな裏切りを 生唇で受け止めて 虚しくなるだけで 上等だって笑えよ 風はまた吹くだろうか 遠ざかる記憶を手繰る 獣に堕ちたあなたの眼 もう一度くださいって 失うごとに欲しがって どこにもきっかけなど 落ちていないとい…
1 土曜日は海を見に行く大丈夫大丈夫って波が鳴くから 2 好きなひとのいちばん嫌なところまで好きになるってありなんですか 3 更新が止まったサイトで何年も明滅をする「新着!」の文字 4 ソーダ水に指を埋めれば(そんなこと…
彼が神を自称しはじめてからも、私たちの生活になにか大きな変化が起きたわけではない。 彼は相変わらず寝坊するし、派手に忘れ物をするし、よく椅子の端にかばんの紐を引っかける。 自称とはいえ神なら予言のひとつもしてみたらどうか…