キルティング
夕闇に染まる帰り道で 汚れた十円玉と一緒に 小さな首が落ちていたもので 縫い合わせてみることにした 不器用なもので針で中指を刺してしまい ああ、と言ったきり言葉が出なくなった 窓越しに快速電車を見送ったあとで 誰かの悲鳴…
夕闇に染まる帰り道で 汚れた十円玉と一緒に 小さな首が落ちていたもので 縫い合わせてみることにした 不器用なもので針で中指を刺してしまい ああ、と言ったきり言葉が出なくなった 窓越しに快速電車を見送ったあとで 誰かの悲鳴…
お願いまだ冥福は祈らずに 薄汚く居残らせておくれよ 今日も懲りずにまた 目を覚ましたんだよ 自問自答は放物線を描いて 私を拒絶し続けるけれども 生きるってさ 生きてくってさ 諸々食ってさ 腐ってくことか それでもやっぱ生…
累々とした手と手と手と 滔々とした舌に飲まれて ─私はついに溺れました─ 誰も助けてくれなかった 誰もみなスマホを見てた 何が悲しいとは愚問です 見上げた星空の何処にも 約束が見つからなかったのですから 孤独は最早 詠う…
人はたやすく過ちを犯すね 過ちを過ちと知っていながら 何度も繰り返し過ちを犯して それらを葬ってしまうのだね 人は簡単には変われないと 可能性の芽を摘み取るばかりの 愛と正義を自称する大合唱はやがて 足並みを揃え堅牢な合…
饐えた銀河の隅っこでうずくまる 私の影を踏みつけて過ぎてゆく人々よ みんなの幸せを願っています 風邪をひいてしまったから 私、赤く腫れた両目で見つめるだけですが 青空のこと 黄色いクラシックカーのこと だいだい色のポピー…
僕には、自分が世界にとって異物であるという自覚をして以来、自在に記憶を捨てたり書き換えたりする癖がつきました。 例えば新しい靴を初めて履くときは左からという拘泥を、くだらないとわかりつつやめられなかったこと。モラルという…
こんな日はただひたすら閉じていたい このまぶたを かたくなに (誰々がお前を批判しているよ) (誰々がお前をネタに笑っているよ) (誰々がお前を誹謗しているよ) (誰々がそこかしこで) (誰々があちらこちらで) えー、そ…
この世界には二通りの人間がいる 星を産む者と星を食む者だ 欄干のない橋のような人生を それでも懸命に歩き続けた君の 震える背中を遊び半分で押した 白々しい者たちへ 僕が贈るべきものとは何なのか 夜空に星が飾られる夜には …
スマホを機種変したので アドレス帳を整理しました もう会わない名前たちを 一括で削除しました 未送信トレイに残っていた あけっぴろげな想いの残滓を 建前と共に飲み干しました 取り返しのつかないことだけが 今も私に苦悩を強…
気がついた時にはもう 血まみれではなかった しかしながら私もまた 命として立ち尽くして 何度も夕暮れを見送り 涙さえ流した夜もあり そのことをどうしても 忘れることは叶わない この街でこの星で 名前のない場所を 探してい…