月明かり

1 月明かり寂しい人だけ乗るバスのエンジンになるあなたの涙 2 カーテンをはさみで引けば月明かりあなたの寝息聞こえてました 3 理由などあとからでいい今はただ月明かりのせいにしてさわって 4 曇天をともに憎んでいられたら…

洋燈

洋燈を持ってきてくれた人 優しすぎて傷の数え方すら わからなくなってしまった あなたを心から誇りに思う 失くすものなどなにもない そう微笑って火を灯した夜 失くすものを探そうとして 探すものがないと気づいた 気づかなけれ…

告白

1 干からびた蝶を燃やす火 忘れたら許されたのと同じことだね 2 カポエラかカポエイラかで揉めたよねシャペウ・ジ・コウロが告白だった 3 雨の日につけあった傷鮮やかに全治一生であれと祈る 4 (内緒だよ)(何が?)(それ…

短歌 共犯

1 観覧車ひりひり上がる 天国の一番近くで泣き出しそうだ 2 まだ誰も見たことがない症状を見せてあげますお部屋においで 3 セロテープを噛むと甘い 教科書に載ることだけじゃきみが見えない 4 テーブルにレモンがひとつ 爆…

短歌 か細い夏

1 ピアノ線よりもか細い夏でした 音階のない波を見ました 2 フロアからテナント去って白い壁 間違い探しの終わらない夏 3 犯人の名前かき消す蝉の声 悪くない人だけが泣いてる 4 PASMOには二十五円しかないから今日は…

速報

1 薔薇の咲くような笑顔でといわれてまずはまぶたをひっくり返す 2 プチプチを潰しています 世界から緩衝地帯を奪っています 3 靴ひもを結びなおしているうちに間を詰めてくる公園の鳩 4 (ラブソング)誰のものでもないきみ…

少女

1 ブランコを思い切り漕ぐ大人にはなりたくなかった つま先で蹴る 2 「ジュラ紀にもいじめが存在したらしい」「変わらない良さがありますねえ」 3 鉄くずが人工衛星だったころわたしもみんな大好きだった 4 雨の日の少女鏡に…

短歌 早春

1 白壁にピンクの|花弁《かべん》春はすぐそこまで来てる(頭が痛い) 2 苛立ちは生ぬるさゆえ風さえも優しくなってしまう季節だ 3 ぎちぎちにイルミネーションを巻かれた桜が笑うまで、あと●秒 4 その地図に春は来るかい来…

短歌 獣

1 鞭打てばいうことを聞く獣ども論理だててもむごいはむごい 2 消えかけの炎を愛でた日々があり強風の日は笑い続けた 3 のど飴を舐めているからヒトだろうそう簡単に殺してはだめ 4 幸せな日々であったとの証明 卒業式に檸檬…

晩冬〜早春

冬尽きて友を許すか喫茶店 風運ぶバスよ栞はさくら色 雑踏よ春告鳥は知らん顔 雪だるま別れ支度を始めるか 巣立ちのちそれでも厨に立つ母