万年筆

まるである日出会ったみたいに 甘く、甘く、溶ける、 それが木曜日でありませんようにと 目を、逸らし、叶ってしまう、 夜になりたいと泣いたあなたの 横顔こそが秋驟雨で 夜になれないあなたと あなたになれない私とが 手だけ繋…

秋202109(二)

枯れてまで寄り添うすすき風に揺れ 名を呼んでなお一人きり秋の朝 秋澄んで大丈夫だと膝こぞう 秋色のシャドウ明日は旅立ちよ なり代わり泣いてくれるか秋の蝉

短歌 カーテン

1 「天国をまだ知らないの」「そら、ええな」天使にも見るダイバーシティ 2 待合のアクアリウムをじっと見る きっと今ならショパンが弾ける 3 ポタージュが恋しくなれば記念日を忘れることも愛しさのうち 4 ルービックキュー…

秋202109(一)

星月夜平和こそ世の宝物 映えるほど虚しくもある毒きのこ 深呼吸明日は明日流れ星 夜学するひとのため息風となれ 朝露と輝く悔し涙こそ

短歌 パンケーキ

1 見つかった小指がとても嬉しくて落ち葉を好きなだけ蹴り上げる 2 深爪が疼く 秋には許される予定で道を間違えてきた 3 カナリアをお道具箱に閉じ込めた秘密わけあう少年ふたり 4 沈黙を分けあえるからきみとなら馬鹿のまま…

事態

1 嘘でしょ、のあとに嘘だとわかったら嘘が嘘でよかったと嘘つく 2 バス停で行き先のないバスを待つ隣でオツベルが辞書を引く 3 鳥かごで意味を飼ってはいけないとつぶやいた人ちゃんとほどけた 4 階段を半音ずつ降りてくださ…

短歌 すっぴん

1 すっぴんで葬った過去 果てしない季節の巡りに逆毛を立てる 2 ラジオからやっぱりきみのSOS 聞こえないふりして眠りたい 3 ワイシャツのボタンを掛け違えている 気づいたけれど教えてあげない 4 この街がパズルだった…

短歌 化物

1 稜線の向こうにはもう何もない 白い絵の具を買って帰ろう 2 ゆりかごを燃やすための火吹き消して胎盤を食む生き物のこと 3 化物と呼ばれるために100点のテストに全部火をつけようか 4 火をつけるために100点を探すが…

仕組み

1 聞こえないふりを貫け嗤い声はやがて必死な声になるから 2 鉄線の上で身動きしない鳩の代わりに空を汚しにゆこう 3 ハート型の雲よ浮かぶな結局は消えてしまうとばれてしまうよ 4 彼岸との接岸点に立っている優しいひとが見…

短歌 爪

1 美男美女ばかり出てくる作品のエキストラにもなれないネイル 2 雨が降る 泣く人泣いてるふりの人 誰の罪かはまだわからない 3 ふわふわの鳥はかわいい羽ばたいて早くお逃げよ(きっと美味しい) 4 きみのため爪を切る夜 …