短歌 空

1 「空あり」をそらありと読むきみがまた壊れかけてる土曜日の午後 2 ふうん、そう。黙りこむきみが何度も殺した虫を目で追いかける 3 もうじきに空は落ちるわその前にルーズソックス捨てておくわね 4 ピーナツの皮がするりと…

短歌 棘

1 サボテンを買ってきました僕たちの家は小さなオアシスでしょう 2 常識という名の棘を引き抜いて血まみれのまま笑いましょうね 3 冬薔薇のあかしろきいろ鮮やかに傷つく人の影だけ綺麗 4 忘れ物ってことにした腕時計つけ直し…

短歌 鳩

1 気もそぞろなんでしょうねとレンズには何にもなびくことのない鳩 2 バラバラになる自意識!アスファルトを一雨ごとにえぐる徒花 3 原稿を読み上げるひと訥々とそれを見るひと(平和ではない) 4 似たような見た目としゃべり…

冬の五句202201

風花のゆく道照らす破顔こそ 手ぬくめて転居届にかかる雪 山茶花のくれない灯る子の頬よ 陽のあたる縁側に初すずめ来る 鳥影よ初日の入の地平まで

がんばれもぐら

もぐら、その姿実にもぐもぐしい 穴掘って掘って埋もれて 夕暮れいつだかわからない 漢字で書けば土竜 強そうでしょう 強そうなだけなんです もぐら、小倉 おぐら さんちの庭に穴を掘る 土かいてかいて疲れて 夜明けが何処だか…

短歌 寂しい倫理

1 倫理って風鈴の音からとったって嘘だとしてもなんか嬉しい 2 常夜灯消せない夜に寂しさを打ち消すために手に取るスマホ 3 ひまわりが咲んでた畑に寂しさがバレないように拍手を送る 4 倫理をろんりと読むのは間違いじゃない…

短歌 カーテン

1 カーテンのふくらむ部屋で唇のカサつき舐めるきみだけの刻 2 鬼ごっこごっこのままで終われないぼくらの結節点を誤魔化す 3 遮断機の向こうで笑うきみを見た花束は死骸の寄せ集め 4 帰ったら熱いお茶でも飲みましょう何もな…

短歌 宇宙

1 銀紙に銀河をひとつ閉じ込めてゴミ箱に狙いを定める夜 2 デニールのうすいつま先でいじくる果てるためあるあなたの宇宙 3 宇宙人だとしてそれが問題にならないくらいあなたが好きよ 4 口開けたままでは「む」って言えなくて…

短歌 夢

1 封筒の切手を丁寧に剥がすのは夢から覚めるのが下手だから 2 クッキーが焼きあがるまで起きないで銀世界だと気がつかないで 3 白線の外側へゆく人たちに手をふり返す冬の夕暮れ 4 イルミネーションの明滅きみがいま壊れゆく…

短歌 花

1 風を受け素直に泣けた夜にだけ銀河の果てに咲く花がある 2 もう二度と会えない人にLINEするしゃぼん玉みな壊すつもりで 3 花束を贈りたい人がいることより重いわけなど知りたくもない 4 花びらを口に含んだ夜のこと忘れ…