短歌 街
1 細胞が分裂をするときの音に耳を澄ませて生きております 2 やめてって言えば言うほどお願いが叶うんだって知ってた?(やめて) 3 東京に特許許可局はないことを悲愴なこととして伝える土鳩 4 人びとはすでに桜を忘れたかス…
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1 細胞が分裂をするときの音に耳を澄ませて生きております 2 やめてって言えば言うほどお願いが叶うんだって知ってた?(やめて) 3 東京に特許許可局はないことを悲愴なこととして伝える土鳩 4 人びとはすでに桜を忘れたかス…
落涙よ花の色まで連れ去って 桜こそ刹那を示す道しるべ しゃぼん玉割れてこそ世の儚さよ なにもかも巡るさだめか花風よ 陽炎がときめき立って犬吠える
1 遠雷を聞くコンビニのイートインぬるいうどんが今はおいしい 2 忘れ物しか忘れずに生きてきたからノーベル賞をもらってもいい 3 生まれ変わったらシーソーのまんなかでバランスをとる名人になる 4 名を呼ばれても振り向かず…
雨の日に傘を持たない人は もれなく優しい人でしょう 降り注ぐ雫に身を預けながら 微笑みを知る強い人でしょう 雨の日に傘を持たない人は もしも誰かの物語のなかで 誰かが死んでしまったならば 祈ることができる人でしょう その…
1 曇天を割って光ったスマホには返事の返事みたいのが来る 2 触れた舌すら体温をいつの日か失うことがこんなにこわい 3 ペーストをしたら見たことない星座が春のシーツにるんと生まれた 4 三日月が目薬の邪魔になるから毎回口…
1 スカートを揺らす花風 死んだってAIがいるからもう大丈夫 2 「新宿で人身事故が起きました」他人事としてアプリを閉じる 3 パスポート渡航予定に天国と書けば窓口のひとが微笑む 4 Facebook 亡き人の誕生日 あ…
1 遊びではなかったと知り組んだ手がほどけなくなる児戯プレイング 2 結ばれず熟れゆく月が溶けるときうさぎの声でるるらと叫ぶ 3 きみはきみだけを信じていればいいなんて嘘なら私がついた 4 懐メロを口ずさむ私のとなりで壊…
コバルトブルーの夕暮れに凪いだ点 立ちくらみすれば許される気がして あなたもあなたもあなたも当然に点 染みといっても差し支えないだろう 真っ白なシーツを私が敷いたはずの 純然たる欠点といってもいいだろう あなたが目を閉じ…
1 ステータス「どく」のまんまで日の入りを待っている道もう歩けない 2 春雷に傘はいらないもう少しだけ罪人でいさせてほしい 3 傘さして雨粒にさえ拒まれて骨になるまでひとりでいたい 4 焼きたてのパンをちぎってくれたから…
1 捨てられるだけの尾ひれがひらひらと彼岸で我を手招いている 2 この街にかもめはいない錆びた目をひっさげ歩く魚ならいる 3 包丁のせなで弾かれゆく鱗きらきらとしてああ生きていた 4 包丁でずんと切断した頭部にごめんと添…