短歌 忘れ物
1 伸びすぎた爪を切るとき残酷になりきれなくて過去が居残る 2 パーフェクト百点満点ですあとは欠けてゆくのを待つだけの刑 3 月見そば最初に黄身を潰すきみ なにが大事かわかっているの 4 光こそすべてであれと祈るひとまぶ…
1 伸びすぎた爪を切るとき残酷になりきれなくて過去が居残る 2 パーフェクト百点満点ですあとは欠けてゆくのを待つだけの刑 3 月見そば最初に黄身を潰すきみ なにが大事かわかっているの 4 光こそすべてであれと祈るひとまぶ…
1 はりつめたミルクの膜を破るときスプーンだけが知った背徳 2 飽きられたおもちゃを捨てるゴミの日に印をつけてあるカレンダー 3 クリスマス過ぎ去ったあと残されたサンタの脱衣を門松に刺す 4 平等は大切なこと死ぬことも生…
1 踏切の遮断機が好きあの世とはこの世の続きと教えてくれる 2 初恋は片側交互通行の道路みたいにすぐにつかえる 3 朝寝坊してもいいって気がついた朝に限って頭は冴える 4 助手席は特等席だアクセルを踏んだら消えるボーダー…
1 いつの間に秋はどこまでいったやら知っている人は黙っている 2 三つ編みをほどいて笑う練習をするための部屋は虚無の在り処 3 鍵かけた日記の鍵を失くしたらあの日のことは永遠になる 4 冬だから飛び降りる場所も寒いしみか…
1 クリスマスまでにかわいくなりたくてワンピに託す時限爆弾 2 何してもきみが思考の邪魔をする好きにならせた罪を償え 3 既読からはや1時間返信の来ないスマホと沈没したい 4 告白の練習をしてクッションを壁に打つのが上手…
1 手に入れたとたん輝き失くすから大事なものは遠くから見る 2 苗字から下の名前になった日の胸の痛みを日記に残す 3 口ぐせを笑ってくれた人がいて冬の空にも虹が架かって 4 今度いつ会えるかなってLINEして既読を待てず…
迷妄をさらけ出した空は 雲をさらって落暉を隠す 真冬に凍える部屋の隅で 漸くまぶたを開いたのに 光を求め扉を開けた途端 冷たく降り注いだ視線が 私の脳天をずんと直撃し 紅い徒花を咲かせるのだ 私の思考はやがて白濁し 流転…
1 まんなかにふたりの指が交差して寂しさ埋めるイルミネーション 2 街角のイルミネーションまた少し息が苦しい綺麗なだけで 3 明滅のイルミネーションに隠れて笑ったきみの出すSOS 4 広告によく知らない有名人 イルミネー…
息を止めないと 泳げない僕らだから 呼吸とは足枷のことだ 大空を飛んでみたいと 翼ばかり欲しがる僕らは 神さまのただの誤算だ 息を止めないと 苦しくなってしまう僕らの 息苦しさはもはや喜劇だ(笑え) 息を止…
沈黙はあまりにも美しすぎて 怖くなるから破ってしまった 秘すれば咲く花は散りました 夜空に煌めくぴかりお星さま 今年も出逢えたオリオン座も 無常以上に官能的な音を立て 彼方へ沈んでいくのでしょう お願い置いてかないで ま…