短歌 カナ

1 バタフライピーのピーは伏せ字という嘘を信じている夏休み 2 ブルーハワイ食べ終えたあと正体をべろんと見せて火星に還る 3 プレミアムフライデーって覚えてる? 馬鹿にしないで歴史は得意 4 シャボン玉 大きくすれば飛び…

魔物

1 溶けかけの氷に棲んでいた魔物 誰も知らない夏の夕暮れ 2 熱発しようやくあえる人がいる 彼岸へ渡ったゆきちゃんという 3 コーヒーはブラックで職場はホワイトで見上げた空は曖昧なグレー 4 かたつむり両の耳朶まで顔を出…

ボート

僕はボートを漕ぐ 他に誰もいない湖面に 流行らない一艘を浮かべ 僕はボートを漕ぐ 他に誰も見ていないから 好き放題に漕ぐ 湖面を波紋が支配する 僕のオールで起こしたそれは いびつに整列をしていく 波紋はすぐに消えていく …

短歌 中指

1 教科書を有害図書に指定せよ量産される「僕悪くない」 2 芽を摘んではみ出た枝葉を切り落としその仕上がりを「優良」とする 3 笑われぬために必死に笑っては自慰の途中で泣き出す娘 4 医師免許弁護士資格教祖様 チューイン…

視野

1 Twitterアプリを消してトレンドを知らない午後に心地よい風 2 伸びすぎた前髪はでも切らないでフィルター越しがちょうど良い視野 3 第六次世界大戦の後くらい 大人がちゃんと謝れるのは 4 停車駅に選ばれなかったホ…

短歌 都会

1 雨やどりさせてくださいその胸は私のための空間でしょう 2 きいたことない曲ばかり再生し昭和生まれ!と誹りを受ける 3 野良犬を見なくなったねみんなよくいうことをきくいい子たちだね 4 Uの字のへちまを見つけたら新作の…

黒鍵

ピアノを食べたひとは ピアノが弾けない 幾何学模様の布の並んだ 小さな部屋に住んでいる蛾の 確信に満ちたうわごとである 面的に繙かれたアンビエントを 口の中でエゴと溶かしている 朝顔が咲き始めても ジムノペディは聴こえな…

羊が凍る

生息域の考察は私に諦観を与え 大勢の前で偉人だった「彼」は 今や晒す恥や罪悪を探している 滴る筈の血は羊ごと凍り 私に妥協を教えてくれた 「彼」は時を見計らって 吐き捨てる科白を磨いて 銀の月に仕立て上げては 番号を与え…

梅雨

雨音のスタッカートに踊る恋 ソーダ水躊躇が喉を下りてゆく 濡れそぼり仰ぎ見る天のモノクロ 蜘蛛の巣も宝石になれ垂れ滴 雨傘をくるりくるりとゆるむ頬 葉の裏のカタツムリこそド根性 長電話すっかり雨もやんでおり ふくよかな母…

短歌 未来

1 生まれ変わりがもしあるのなら九十九里浜の砂の一粒がいい 2 濡れそぼる後ろ姿を発見し声張り上げる「新しい顔よ」 3 永遠はその辺にある(まさか、え、まさか)そのまさかです 4 限界を越えて見せろというのならまずは手本…