短歌 喫茶店
1 汗をかくグラスに遺るきみのあと たった二文字が言えなかった 2 頬杖をついて見つめる先にいる大きな蝿にさえ嫉妬する 3 本当は左利きだと知ってたらきみのひだりを支配したのに 4 曇天が晴れ空に化け何事もなかったように…
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1 汗をかくグラスに遺るきみのあと たった二文字が言えなかった 2 頬杖をついて見つめる先にいる大きな蝿にさえ嫉妬する 3 本当は左利きだと知ってたらきみのひだりを支配したのに 4 曇天が晴れ空に化け何事もなかったように…
1 音もなく暮れる小部屋の片隅で誰かの悲鳴に耳を澄ます 2 わからないことはスマホで調べようたとえばきみの好きな人とか 3 指先で燕の飛影おいかけてふちに当たって寂しくなって 4 どこかしらから聞こえくるサイレンはどこか…
1 太陽を赤色で描く子どもらの瞳に映るはじめての嘘 2 「本当に削除しますか?」の画面に選択肢が「はい」と「Yes」しかない 3 風を受けはためくTシャツの裾っこを触ってもいい季節ですよね 4 不安から恐怖に変わる瞬間の…
1 「飛べるはず」から「はず」だけが剥がれ落ち中央線の線路見つめる 2 他人事として過ぎてゆくカタコトン線路の温度に気づかずコトン 3 ふたりして夜に食べられそれからは街灯の蛾にさえ怯えて踊る 4 もし5月に雪が降ったら…
木を植えたいのです 誰のものにもならない場所に 誰にも識られることもなく もちろん誰のためでもなく これ以上眩しくないように これ以上騙されないために 独りでちゃんといられるように ああそれでも 僕の認識は否が応でも 大…
1 頬杖をついて読書をしてるけどさっきのことは内緒なのかな 2 それ以上優しくしたら許さない本気で私を壊しにきてよ 3 わからないことほど面白いけれどきみを超える謎なんてない 4 よく熟れたいちごをひと口で食べ切る潔さな…
すべての痛みが 癒されるためにあればいいな すべての悲しみが 許されるためにあればいいな すべての傷という傷が 優しくなれるためにあればいいな 裂かれた皮膚は かさぶたを経て強く生まれかわるね 神様もあの世も知らないけれ…
1 黒い猫として生まれて疎まれてそれでも雨に打たれる権利 2 街じゅうに傘の花咲く 正しさはどこにもないと数人気づく 3 銅像の濡れそぼっても堂々ともろてを伸ばす先の暁光 4 夜が明けてまだしとしとと降ってたら私たちきっ…
1 ライオンもウサギもヒトもみんなして心臓ひとつ風にまかせて 2 ラジオから聞こえたきみのSOS ごめんradikoじゃ一分遅れ 3 扇風機ひとりぐるぐると回って虚しいところが私みたい 4 飛べるはず空ではなくて影のほう…
【行事】 後悔も思い出であるこどもの日 背伸びした柱の疵に父笑う 母の日に贈る笑顔の花束よ 【時事】 距離を取ることもあるまい蛇苺 自粛してひとりでに舞うドーナツ盤 麻マスク手垢の意味を問い直す 【恋】 水玉の覚悟を決め…