短歌 晩秋のカニ

1
コンビニで肉まんを買ういつもの儀式のように冬が近づく

2
道端に冷えたコインが落ちていて寂しくなっていいのだと知る

3
1プラス1が2になるとき0はレゾンデートルを探しはじめる

4
くちびるをくっと上げたら虚しさに勝てるだろうか 勝ったところで

5
カニクリに蟹が入っていなくても重要なのはクリームのほう

6
さあ早く(ミラーボールを飲みこんで踊ってしまえなにもかも虚仮)

7
ささくれが一箇所できた 十全の人というのはどこにいるんだ

8
新しい武器が生まれるたび人は生んだ武器から試されている

9
吐く息が白く散ったらきみの手を離す理由も消え去っていく

10
カニカマを蟹と信じていたころは世界に光だけ満ちていた