(12)リメンバー
過思考症候群<overthinking syndrome> DSM-13に初出。その症状を発見或いは定義したのはスイス人の医師、ハンス・フォン・ホーエンハイムである。 不安神経症の一種に位置付けられ、症例の多くは投薬によ…
過思考症候群<overthinking syndrome> DSM-13に初出。その症状を発見或いは定義したのはスイス人の医師、ハンス・フォン・ホーエンハイムである。 不安神経症の一種に位置付けられ、症例の多くは投薬によ…
まだ、なんとなくなんだけれど、それでもわかったことがある。わかったというより、痛感したことというべきか。 どうでもいいこととそうではない大切なことを、私はちゃんと仕分けておく必要があるということ。 「Project Pa…
「いおり、すきなことは、続けたほうがいいよ」 「陽羽、どうしたんですか」 「すき、な、ことは、つづけ、たほう、が――」 やがて陽羽は口をぱくぱくとさせて、そのまま黙ってしまった。 「エリーゼ、何があったんですか」 伊織の…
伊織は買い物に行くと偽って、両親の泊まっているビジネスホテルを訪ねた。ビジネスホテルといっても広めのロビーがあったので、フロントに呼び出してもらい、伊織は硬めのソファに腰かけた。 時刻にして午後十時過ぎ、街はすっかり寝支…
最寄り駅の改札まで着いたところで、陽羽は伊織のシャツの裾をぎゅっと掴んだ。 「遠くへ、って言ったけど、わたし、やっぱり家に帰る」 「陽羽、私には状況が全くわからないんです。私の親と陽羽は、知り合いなんですか?」 陽羽は、…
喫茶店にいた客の視線が、エリーゼに集中する。エリーゼは気まずそうに、「ふん」と吐き捨てるように言った。 「ごごう……?」 陽羽が不思議そうな顔でエリーゼを見る。エリーゼは、「なんでもない」と陽羽に言い聞かせるように言った…
伊織は両親の職業のことをあまり知らない。祖母に尋ねたこともあったが、よくわらない、とのことだった。何かしらの研究事業に携わっており、そのために北欧に拠点を構える機構に所属していることだけは、かろうじて知っていた。 伊織が…
その日、夕方から駅前の大きめの公園で夏祭りが開かれるという。当然、陽羽は「いおりと行く」と言ってきかなかった。エリーゼはカバンから財布を取り出し、千円札を伊織に手渡した。 「買い食いは、この範囲でお願いね」 「ヨーヨー釣…
季節は夏へとまっすぐに向かっているようで、日照時間も日に日に延びていっている。初夏の新緑が徐々に濃さを増し、力強い季節へと成長しているかのようだった。 晴れたら、窓を全開にして風を入れる。まだエアコンを稼働させなくてもし…
伊織が暮らすのは一人暮らし用のアパートなので、この同居が大家さんにばれたら追い出されるかもしれない、という危惧があった。 朝、ゴミ出しに行くときもエリーゼは、バリバリのパンクスタイルにピンクヘアをばっちりきめるものだから…