Case11.提案

葉山と来たのは、落ち着いた佇まいの素敵なレストラン、ではなく、よくある街中の中華屋だった。それでも葉山に誘ってもらえたことが嬉しくて、香織は浮足立っていた。 青椒肉絲とビールを頼み、ジョッキで「お疲れ様」と乾杯する。 「…

Case13.歌声

「そんな玩具で俺を脅すつもりかい」 「玩具に見えますか」 「事務員の若宮さんには拳銃の携帯はできないはずだ」 「かもしれないですね。葉山さんこそ大丈夫ですか? 使用許可も出ていないのに」 刑事はいつも拳銃を携帯しているわ…

Case9.約束

星空のよく見えるベランダに出た葉山は、しんと冷えた夜の空気を吸い込んだ。 「いいとこに住んでるんだな」 夜空を支配する星々は、今にも降り注がんばかりにきらめいている。 「それは?」 葉山は興味深げに、隣の部屋の天体望遠鏡…

Case3.髪

るいの病室を出たはるかに声をかけてきたのは、娘を連れた隆史だった。 「はるかちゃん」 「西条さん。どうしてここに」 「お見舞い」 そう言って、テラエシエルと同じアーケードに入っているケーキ屋の箱を見せた。 「シュークリー…

Case1.事情聴取

古城姉妹は早くに両親を亡くしており、9つ年上の姉るいが会社員として妹のはるかの夢を応援していた。はるかはどちらかというと引っ込み思案で、何をするにもるいの後ろについて歩くような性格だ。 そんなはるかの夢は、パティシエにな…