神さまの処方箋

風邪をひいてしまった。思い当たるのは、薄着にベッドで、ひたすら泣き明かしたことだ。 失恋の前に「大」がつくレベルのダメージだった。もう恋なんて二度とするもんか、と強がれば強がるほど、傷は深くなるようだった。 ぼーっとした…

ジグソーパズル

完成したら、終わり。終わってしまえば額縁に飾られて風景画未満になる。 だからふたりのジグソーパズルが完成しないように、私は思い出のひとかけらをポケットにしまった。 「なんだっけ、きみが行きたがってたカフェ」 スーパーマー…

生ぬるい春に整うパズル

言葉より先に、花はそこに咲いていた。私は貴方が貴方自身を望む以上に、貴方のことを想っているの。 沸騰を知らせる甲高い音で、俺はうたた寝から強制的に現実へと引き戻された。緩慢に椅子から立ち上がり、コンロの火を止める。加工さ…

ピカピカ

ユニコーンを父に、ペガサスを母に持つアレクには、しかし角も翼も授けられなかった。兄弟たちはアレクを憐れみ、また疎んじた。しかし、父と母だけはアレクに惜しみない愛情を注いだ。そのおかげで、アレクはのびのびと育つことができた…

最終話 ロマン

彼は私の前からいなくなった。事件は彼の告白によって急展開し、即日、彼は逮捕された。それでも、今も彼は私の彼氏で、大切な人だ。 そういえば、二人の写真を一枚も撮っていないことに、今更になって気づいた。スマホを漁ったが、どこ…

第十八話 フラッシュ

すべてを聞いた私は、涙を流しながら、彼の手を握りしめていた。 「何も……何も知らなくて……私。ごめんね」 「どうして智恵美が謝るの」 「だって私、完全に勘違いしてて……夏菜子のことも、全然わかってなかった。そんなことがあ…

第十七話 夏菜子

入学してすぐに夏菜子が声をかけてきたという。積極的な性格だった彼女は、新歓コンパで同じグループだった桐崎くんに一目惚れしたらしい。 告白こそしなかったものの、すぐに連絡先を交換し、LINEなどで会話をしていたという。 桐…

第十六話 唯一無二

嫌だ。こんなお別れなんて、絶対に嫌だ。 私は必死で彼のシャツの腕の部分をつかんだ。 「べ、別にいいの」 声が震える。 「殺人鬼なんかじゃなくていい。むしろ、そんなんじゃないほうがいい。お願い、ごめん、謝るから、『さよなら…

第十五話 期待

「確かに、大橋夏菜子を埋めたのは僕だよ」 そう、でしょう? 「でも、彼女を殺しただなんて、僕は一言も言ってない」 !? 「大きな間違いがあるみたいだから、ちゃんと伝えるよ。地中にははるか太古からの記憶が眠っている。それを…

第十四話 定義

私たちは黙ったまま、スタバの一角に座っていた。ソイラテを一口飲み、ちらりと彼の顔を見る。想像してはいたが、やはり、いつも通りだ。それが、却って怖かった。 「あの、さ」 私はおずおずと言葉を発した。 「聞いた? ニュース」…