夏の五句

幽霊も踊るしかないフェスの夜 背伸びして後悔ののち夏休み 夕立ののちに手放す執着よ 青嵐それでも笑んでよいか問う 水玉を見つめる瞳もまた玉よ

夏の五句

青い舌出し笑いあう夏の宵 梅雨明けよ飛行機雲の伸びる空 道半ば転んでもなお青嵐 玉の汗すべり落ちるかまるい頬 夏の月付箋だらけの文庫本

夏の五句

風薫る洗いざらしのワイシャツよ 涼風よつまびくショパン午後三時 隊列を外れ自由を知る蟻よ 五月雨が地を打ち弾む三連符 へいぼんな日々は宝よ麦茶飲む

春の五句

うつろいを告ぐ蝶々の瞬きよ べにをさす誰もがやがて春惜しむ 平和こそ心に架かる初虹よ 春愁にひとりラジオの沈黙か 猫の子の生意気なこと花まるぞ

恋の手帳

うららかよ午睡ののちの二度寝こそ 突然の打ち明け話春一番 シャンプーよ指に絡まる桃の香よ 朧月ほんとうのことだけが要る いぬふぐり踏まれてもなおいぬふぐり ひとひらの桜舞いこむプリーツよ 春惜しむ傷つ…

春の

桜咲く散るを知ってか全力で 諍いもほどかれてゆく雀の子 春時雨エンドロールと遊ぶ影 雁帰る生まれ故郷はなお遠く のどかさよ犬吠え猫は夢のなか

早春

ワンピース春一番に身を預け 春ショールまといスキップ生きてこそ たんぽぽのエールを受けて踏み出す児 春の蝿SOSか置き手紙 ブランコよ見え隠れするおぼろ雲

晩冬〜早春

冬尽きて友を許すか喫茶店 風運ぶバスよ栞はさくら色 雑踏よ春告鳥は知らん顔 雪だるま別れ支度を始めるか 巣立ちのちそれでも厨に立つ母

冬の五句

風花のゆく道照らす破顔こそ 手ぬくめて転居届にかかる雪 山茶花のくれない灯る子の頬よ 陽のあたる縁側に初すずめ来る 鳥影よ初日の入の地平まで

マフラーを編むほどに急く指先よ 初雪が迷いと消える街角よ クリスマスツリー仰いでひとりの夜 ひと切れをわけあう頬の赤らみよ ただいまを待つ父母よ十二月