カテゴリー: 俳句

新春

息災をインクが告げる年賀状

老いた手で春待つ母の筑前煮

平等か良い子悪い子お年玉

初雪と消える初恋あわい窓

見上げれば祖母の微笑む冬銀河

冬~春

約束が輝きを増す聖夜こそ

残り鷺孤独を辞書に刻んだか

ゆく年に感謝を告げて涙明け

子どもらの秘密を知るよ雪だるま

鍋囲む笑い声まで美味い夜

目を閉じて心まかせてアゲハ蝶

散る花よいずれそちらへ口結ぶ

人は人思い知るのが卒業式

 

都市を詠む

白い息はずませ進む交差点

クリスマス山手線で結んだ手

初雪を同じビルから見るひとよ

ビル群はイルミネーションみなひとり

枯木立ひとりで歩く渋谷駅

新宿よ冬の落暉に細める目

肉まんであたたまるのが都市の冬

神無月

さよならを見送るだけか秋の風

林檎食む頬に夕陽のさしてこそ

稲妻と落ちる初恋閃いて

目をつむり亡き友と酌む紅葉酒

すすきまで手をふり返すひとりの夜

快速よ待ち人の住む街も秋

オルゴール遠い記憶に照る紅葉

赤とんぼ追い越してまた追い越され

ひりひりと右肩が泣く秋の蝶

りりりりとなにが悲しい鈴虫よ

どんぐりと寂しさ分かつ手のひらよ

驟雨まで私を責めるため降るか

アキアカネ恥じらい消えてしまうまで

厳かに影を伸ばしてひらく桔梗

白亜紀も湿らせたのか秋時雨

見上げれば初恋を知る星月夜

栗ひとつ笑顔ふたつの牽制ぞ

空き缶のからんと響く秋の空

ススキまで去りぎわに手を振り返す

梅雨

雨音のスタッカートに踊る恋

ソーダ水躊躇が喉を下りてゆく

濡れそぼり仰ぎ見る天のモノクロ

蜘蛛の巣も宝石になれ垂れ滴

雨傘をくるりくるりとゆるむ頬

葉の裏のカタツムリこそド根性

長電話すっかり雨もやんでおり

ふくよかな母のてのひら梅雨の雲

きみの顔ビニ傘越しに観察ぞ

大雨ののち訪れる初恋よ

目を閉じてそれでも灯る蛍火よ

子のいのち託した蛍去ってゆく

雨傘の柄に重なったふたりの手

紫陽花にスマホを向ける老いた父

結ばれず自由を知った夏の蝶

クーラーのリモコン権が火種とは

よく冷えた瓶に頬寄せ笑う子よ

扇風機若さも過ぎた穏やかさ

舞い込んで我を癒すよ迷い蝶

汗をかくグラスに残したきみの名

わたしの初夏

【行事】

後悔も思い出であるこどもの日

背伸びした柱の疵に父笑う

母の日に贈る笑顔の花束よ

【時事】

距離を取ることもあるまい蛇苺

自粛してひとりでに舞うドーナツ盤

麻マスク手垢の意味を問い直す

【恋】

水玉の覚悟を決めたワンピース

水しぶきかけあい笑う仲となれ

ベランダに洗いざらしの恋心

【街】

風薫る信号機まですべて青

新緑よ街は鮮やかなパレット

ワイシャツの白も映えるよ交差点

【自然】

初夏の陽が許してくれる過去もある

我が憂い拭う若葉の健気さよ

風よ吹け命はここぞつばめの子

小包をほどく笑顔に春が来る

書きかけの恋文にひとひらの花

思い出の隅に映えるよチューリップ

少年の道しるべたれ春北斗

帰りみち綿毛を吹けば歌になる

日めくりとともに顔出す葉桜よ

シクラメン三連符まで連れてくる

四月馬鹿いいえ年中無休の恋

花冷えを言い訳にして逢いにゆく

空の下だれもひとりで花が散る

花吹雪すべて忘れてしまおうか

叶わない恋ならいっそ蝶となれ

草の芽とともに天指す無垢な指

花として歩いてゆけと祖母のふみ

いさかいも花の下ではほどかれる

たんぽぽをたんぷぷという子がひかり

ぜんまいの苦さが旨さになる破瓜

あの人も雁と帰って一人飲む

桃の顔いわれ嬉しい褒め言葉

いぬふぐり踏まれても地を彩って

花吹雪すべて忘れてしまおうか

叶わない恋ならいっそ蝶となれ

草の芽とともに天指す無垢な指

花として歩いてゆけと祖母のふみ

いさかいも花の下ではほどかれる

たんぽぽをたんぷぷという子がひかり

ぜんまいの苦さが旨さになる破瓜

あの人も雁と帰って一人飲む

桃の顔いわれ嬉しい褒め言葉

いぬふぐり踏まれても地を彩って

鷺の巣に手を伸ばしたらそよぐ声

春雷よ私の恋をごまかすな

東風を知り戻れぬ日々にただ涙

放課後の口笛とける春の闇

厳しさは優しさだった春一番

芽吹きとは前を向くための道標

寄り添うとすぐにほころぶ梅ときみ

遠い自由に憧れるしゃぼんだま

前髪を乱して笑う風車

風船をねだった日々に添えるうた