桜が咲いたんでしょう

各駅停車新宿行きが 善悪を轢いてくれたなら—— 蝶よ、蛹のまま溶け出でよ 艶めかしく地球へと 四肢を投げ出した女の あるいは黒猫の 若しかして寂しかったのか 特急新宿行きは 善悪正邪を無視して進む——…

る、る、る

彼の唯一の関心は素数である。 る、る、る、と私が歌ったところで全く意味はない(それでも絞りだした悲鳴が歌なのだけれど) 私はあの日あの日あの日幕張付近で京成線の踏切を渋滞する車の後部座席から眺めており…

名前を呼ばれても

挨拶のない夜明けに 一途な愛の現在位置を確認した 己の愚かさがよく溶けた アイスソイラテが美味しい午後 しあわせ、と口にすれば ひたいの玉の汗が笑いだす 暑いですねぇ ひところはコートも着ていたのに …

水草

加速度を上げたレッテルが 水槽の中ではち切れるとき 金魚どもの骨々は報われる 空——まだ数えるには足りない幻滅と 明滅するスマートフォンの広告たちが ゆらゆら行く手を阻むためだけに在り 私の残滓の根本…

惰楽器

私はあなたに もう正論しかぶつけられないのだ 二度と過あやまつことさえもできないと 歌を歌っても 愛してるよりさよならの数の方が 多いことに気づいてはならなかった (後悔するために ……継続される呼吸…

残響

抱きとめきれなかった 感情未満のずくずくたちが 何一つ許されることなく 宙空に反響している 見さだめられなかった 後悔未満の星のたまごらが どれ一つ相手にされずに 私のなかに還ってくる 温めるだけでよ…

名前を呼ばれても

挨拶のない夜明けに 一途な愛の現在位置を確認した 己の愚かさがよく溶けた アイスソイラテが美味しい午後 しあわせ、と口にすれば ひたいの玉の汗が笑いだす 暑いですねぇ ひところはコートも着ていたのに …

リボン

食べる、そのときに 口が開くと歯が見える いのちを噛み砕くための しゃべる、そのときに 口を開くと言葉が出る 誰かを傷つけるための 黙る、そのときに 口を開けると馬鹿みたい 本当は馬鹿なんだけれど 食…

メタセコイア

私にとってメタセコイアは どこまでも悪辣な他人事で あなたにとってその大樹は 呼吸そのものだったとして 結局微笑むことを選ぶでしょう 危機を報せるジングルベルが あなたには只管 おめでとう おめでとう…

——

私の愚かさは例えるならば 血を吐く前夜の白羊 ミュートしたまま終わった 大演説のごとく虚しい 始まりのない終わりは何処 私に居座るよくない細胞 ついた嘘の数だけ分裂する 下がりきらない半音に ジムノペ…