傘を持たない人

雨の日に傘を持たない人は もれなく優しい人でしょう 降り注ぐ雫に身を預けながら 微笑みを知る強い人でしょう 雨の日に傘を持たない人は もしも誰かの物語のなかで 誰かが死んでしまったならば 祈ることができる人でしょう その…

コバルトブルーの夕暮れに凪いだ点 立ちくらみすれば許される気がして あなたもあなたもあなたも当然に点 染みといっても差し支えないだろう 真っ白なシーツを私が敷いたはずの 純然たる欠点といってもいいだろう あなたが目を閉じ…

開花宣言宣言

値札さえ与えられず 都合の悪さを携えて 焼きたてのパンのことを考えている 春、魔物を産んでしまったから 古アパートでほどけた安い自我が フリースタイルで追われ果てた ずっと笑っていたのが私で そばで泣いていたのが私で 逆…

春変

寝ぼけた顔して 幼い唇でぽろぽろと 退廃的なことを言うの 春だというのに 心臓くり抜くような 我儘ばかり振り撒くの きみは冬に眠っていたかったんだろうね 魚のような目をして 灰色の空を見ている 饐えた風の手土産を 嬉しそ…

容疑者3名の円卓

論客R氏が腕試しに 青い瓶の中身を知りたがり 詩人D氏が立腹して それは野暮だと吐き捨てる 主宰W氏は円卓にて ほくそ笑みながら足を組む R氏が求めるのは日常からの脱出方法 D氏が詠うのは牛肉へ捧ぐ鎮魂歌 W氏はぺろりと…

キャラメル売り

シナプスの存在しない場所に 私はいる 私がいる あられもない姿で (キャラメルを舐めながら) 横たわっている 銀紙をくしゃくしゃに 気の済むまで丸め終わった残骸が 私の心臓だったとして キャラメルを舐め終えた 甘ったるい…

私の庭(という強制的沈黙)

遠くで破裂音がして 目が覚めた青い夜は 寂しくなってもいい 冷たい廊下を裸足で歩いて 自分の首を絞めようとして でもできなくて泣きました カチューシャが似合わなくなって 夢の国だけでワンピースを纏って どんどん静かになっ…

ポインセチア

迷妄をさらけ出した空は 雲をさらって落暉を隠す 真冬に凍える部屋の隅で 漸くまぶたを開いたのに 光を求め扉を開けた途端 冷たく降り注いだ視線が 私の脳天をずんと直撃し 紅い徒花を咲かせるのだ 私の思考はやがて白濁し 流転…

ラドリオ

息を止めないと 泳げない僕らだから 呼吸とは足枷のことだ 大空を飛んでみたいと 翼ばかり欲しがる僕らは 神さまのただの誤算だ 息を止めないと 苦しくなってしまう僕らの 息苦しさはもはや喜劇だ(笑え) 息を止めないと地球に…

ぴかり

沈黙はあまりにも美しすぎて 怖くなるから破ってしまった 秘すれば咲く花は散りました 夜空に煌めくぴかりお星さま 今年も出逢えたオリオン座も 無常以上に官能的な音を立て 彼方へ沈んでいくのでしょう お願い置いてかないで ま…