飛べばいいんだ

飛べばいいんだ 苦しいのならば ここ以外の空へ 飛べばいいんだ あなたは懲りもせず 素数を数え続けては 時折偶数に瞠目して 修正ペンを探し出す 飛べばいいんだ 可笑しいのなら ここ以外の地へ 飛べばい…

ミラーボール

あなたの右目はミラーボールで だからいつもくるくる回って ママのご機嫌を伺っている 新聞のラテ欄には 今日も悲しみばかりが システム化されて掲載されている 「大人になったらぁ」 ミラーボールが逆回転す…

あうええ

むら雲が機嫌を損ねはじめた 夏の終わりのはじまりだ あうええ ときみの唇が動く 八月が今年も終わるそうか たすけてって言えずに 子どものふりをしたんだね なにもかも知っていながら きみのためにできたこ…

花と呼吸あるいは

知らないことが減っていくと 痛み止めを飲んでるみたいに 誤魔化すことが上手になれる 不都合な時は沈黙することが 何よりの特効薬だったりする 輝きを強制されて 笑顔の練習をして 最適解だけ選んで いつも…

鳥、温かい食卓

地図からきみを消して 温かい食卓が実現する 断末魔にしては随分と 楽しそうな表情だった パラレルワールドでは きみが私を消すために 夜空から水瓶座を奪い 肩で呼吸し続けている 白い箱に詰め込まれた 安…

洋燈

洋燈を持ってきてくれた人 優しすぎて傷の数え方すら わからなくなってしまった あなたを心から誇りに思う 失くすものなどなにもない そう微笑って火を灯した夜 失くすものを探そうとして 探すものがないと気…

自転車——輪舞曲にのって

傷つくくらいなら 優しくなんてなくていいよと 伝えてくれた人が 襤褸を纏って笑っている 手垢のついた選民思想を 青い炎で燃やすと 楽譜が生まれる 傷つけるくらいなら 黙っていたほうがいいよと 教えてく…

がんばれもぐら

もぐら、その姿実にもぐもぐしい 穴掘って掘って埋もれて 夕暮れいつだかわからない 漢字で書けば土竜 強そうでしょう 強そうなだけなんです もぐら、小倉 おぐら さんちの庭に穴を掘る 土かいてかいて疲れ…

私に手紙をください

見上げれば半月が もう半分の可能性を殺しながら ぽっかりとろりと孤独を浮かべて 見下ろせば人々が 内臓と骨と血と神経を運ぶため あうあうと喘ぎながら歩いている 位置情報をオフにして Wi-Fiから逃れ…

万年筆

まるである日出会ったみたいに 甘く、甘く、溶ける、 それが木曜日でありませんようにと 目を、逸らし、叶ってしまう、 夜になりたいと泣いたあなたの 横顔こそが秋驟雨で 夜になれないあなたと あなたになれ…