短歌 まあ夢だけど

1 どうしてもそれがさだめと言うのならドロップキックで軌道を変える 2 この管を抜いたらきみの待つ家に帰れるのかなコートは何処だ 3 血の赤さ 生きているって確認は一日二回までにしましょう 4 喉の奥にずっと居座る吐き気…

短歌 雲にあだ名を

1 拡張子 .tttなんて誰も使ってない忘却は優しい仕組み 2 夜が明けるまで鍵盤の前にいて聞こえる音をきみは想った 3 匂わせた刃むなしく引っ込めたあの人は今 あの人は今 4 おとなしく折り目正しい者たちがスマホ越しに…

短歌 オブラート

1 待ってくれ 切なくない失恋 とか そもそも 恋 じゃ なっかたので は 2 本音だと怒られるから巻きつけたオブラートの味しかもうしない 3 どうしても正解だけがほしいのかタラバのガニは食べちゃだめだよ 4 アドバイス…

短歌 あくび

1 見たくないところを見ずに礼賛を送るかたちの暴力装置 2 ポケモンの新種だったら捕まえるけどその前に記帳をしたい 3 あくびって幸せなときだけに出るあくびができるそれが幸せ 4 油揚げ五枚入りしか買わないし肌も記憶も曖…

短歌 ん? ん? え? は?

1 「平等」と「優劣がない」との差を知ると眠れなくなるけどなんか素敵だ 2 思春期を終われないまま思秋期を迎えた人が訪ねてきた午後 3 ハイハット・シンバルみたく人生が操作できたら飽きてしまうよ 4 挫折って決めつけられ…

短歌 ニアリーイコール

1 春一番友達のままでいたいって友達ですらない人から 咽せた 2 美しいから傷つくのだと励まされこころに春の居場所をつくる 3 疑えるニアリーイコール知性って卒業前に認めてみなよ 4 春よ、来いっていうか頼むから来てくだ…

短歌 ひりひりするね

1 ファイティングポーズじゃなくて寒いから猫のポーズを試みたのに 2 殺す気か! ってよくあるツッコミにニコリともせず満月の下 3 髪の毛を上手く巻けても舌先に口内炎がいる日常だ 4 えらいひと心許せる友達がいないがゆえ…

短歌 白いベンチ

1 もういない信じたくないでもいない笑えてるって伝えたかった 2 この風に吹かれるための傷だったコートを脱いで空へ晒そう 3 鈴が鳴るあなたはあなたのままでいいとかいう奴はみんな嘘つき 4 きみの目が春を察して立ち上がる…

短歌 いいけど

1 毒を吐くのはいいけれど「毒を吐く人なんだな」と思いはするよ 2 唇が割れて味わう血の味に慣れることなく来る誕生日 3 指先の乾燥が自己像を偽るおいiPad私だってば 4 「考える」なんてそのうち人間の営みからは消える…

短歌 涙を借りる

1 曇天にこっそり添えた針の月きみに見つかる前に帰ろう 2 このどこを裂いても赤い血が出るのだからあんまり笑わせないで 3 日曜日なんて金魚は知らなくて医院の隅でいつも通りで 4 愛の鞭だろうが痛いものは嫌っていうか愛は…