今日の短歌 ベランダ

1 ソーダ水こぼしたとたん「運命」を口ずさむきみ指揮するわたし 2 錠剤に向ける視線の邪魔をする きみが見るべきなのは私だ 3 降り立ったホームでカーディガンを脱ぎ風に教わる夏への扉 4 もし栞になれるのならそばにいてと…

今日の短歌 はんぶんこ

1 はんぶんこしたコロッケの少しだけ大きいほうを牽制しあう 2 コンロの火とろとろ見つめ手をつなぐ地球も星のひとつと気づく 3 ラッシュ越えきみ待っている家に着く一等賞はいつもわたしだ 4 ワイシャツがはためく午後にラジ…

今日の短歌 ふたり

1 「ごめんね」を言い出せないで夕飯後渡すつもりのコンビニプリン 2 街あかり きみはあらゆる寂しさに若草色の栞を挟む 3 昼寝するとなりで雨を眺めてる すき の呪文はまた独り言 4 ピリオドを消し去りたくて加速する空も…

短歌 甘い雨

1 まぼろしを見た帰り道待つ人のいる意味じんと踏みしめながら 2 窓辺にはなお泣きじゃくる少女わたしがいて四月の空に雨を呼んでる 3 抱きしめてあげたい人がいることが現うつつにも降る涙の理由 4 これ一生消えない傷だ笑う…

短歌 球

1 寂しさのしっぽをそっと撫でてやる怒りに変化させないために 2 さよならは音も立てずにやってくる春だ春です春であるとき 3 我が家ではテレビは地球と同じで壊れかけても気づかれずいる 4 論破して浸る優越感よりもおつりを…

短歌 虚

1 他人ひとのため傘を差し出すひとだけが濡れている街とても虚しい 2 傘さして待っていました穿たれた虚しさやがて光りだすのを 3 書きかけの手紙を破る さらさらと虚しさが遊びにやってくる髪 4 虚しさはAmエーマイナーが…

短歌 耳

1 右耳にはじめてあけたピアス もう戻れないのが心地よかった 2 耳たぶの存在意義を問いかけて二の句失う缶チューハイよ 3 風の丘 耳にピアスを欠かしたら自分らしくはあれないだろう 4 二番目じゃダメなんですと涙声ゆれる…

短歌 花

1 葉桜にレンズを向ける強がって目を背けてた日々にさよなら 2 燃えさかるつつじに両手突っ込んで「お前らを漢字でも書けるぞ」 3 愛という際限のない重力に負けてしまった路傍のポピー 4 菜の花は目に優しいし美味しいし体操…

短歌 鯖(あああ/酸性)

1 a.k.a 笹塚心琴 自意識を溶かすため強いハイターを買う 2 「新宿は嫌い」って言う人にだけ酸性雨が降り注げばいいな 3 青色の肉じゃがピンク色の空 ヘッドフォンから真鯖の悲鳴 4 いっせーの、で息を止めたらどちら…

短歌 四月

1 明るいとサーチライトに意味はない大至急なにか思い悩めよ 2 明るいとサーチライトに意味はないけれど四月よ油断しないで 3 四月には二種類あって新しい靴を履くのは幸せなほう 4 四月には二種類あって私のは深呼吸にも許可…