例外

1 いつか来る別れのために歯を磨くショートフィルムに収まりたくて 2 抱きあえて僕らよかったいつの日か別れが来てもこれは永遠 3 思い出になるくらいなら赤ペンででっかいばつをつけてください 4 たいていは「いい人だった」…

短歌 叶

1 玉ねぎの皮を剥く手が止まらない流星群の夜のキッチン 2 サイレンは他人事として鳴り響く禁じられないシーソーゲーム 3 街宣車その勢いで火星までいってらっしゃいというさよなら 4 ツユクサの青をヒールで踏み潰す(公序良…

短歌 目

1 水槽の鯵と目が合う天国の入口にいると自覚している 2 夜空には無数の目玉もうやめて気が済んだって破裂しないで 3 ランドルト環のぱっくりしてるとこに指を入れたらぶにゅっとしてる 4 眼球がごろごろ惑う手を取って踊り明…

短歌 まつ毛

1 離れれば離れるほどに輝いてみえる故郷の最寄りのスタバ 2 頑張れは命令なんかではなくて代替不可な祈りの言葉 3 この爪も化石になれば誰かから求められると信じて舐める 4 触角も羽もしっぽも失ってそれを進化と呼びたがる…

1 UFOがいない証明ができずに実りの秋だ誰を責めよう 2 天狗からもらったサイン本として神保町の東に隠す 3 星の降る街に暮らしてふたりきり 部屋は狭いほうがいいと笑う 4 宇宙にも終わりがあると信じたい終わるとしたら…

1 ワイパーが動き出したら息を止めせめて時間を忘れさせてよ 2 シネマでは結ばれていたあのふたりブレーキペダル強く踏み込む 3 はじめからわかっていたよ花束は作り笑いを誤魔化すためと 4 味のないガムを噛むとき未練とはや…

短歌 伝言

1 エラ呼吸できないぼくら輝きは確かにあの日失くしたうろこ 2 うろこ雲見上げて歩く帰り道 神さまがまた居留守を使う 3 そばにいてなんて言えない留守電に悲鳴を入れたなんて言えない 4 言の葉が紅葉したら逢いにゆくひとと…

食卓

1 ふっくらと焼き上がったね僕のためだけに死んでくれた秋刀魚ラブ 2 それぞれの自宅に小さな火葬場がグリルという名で存在をする 3 おいアヒルお前の兄は目の前の丸焼きとして立派であるぞ 4 カブトムシ素手でさわれるみたい…

短歌 羽

1 苦しくて金木犀を手折るきみ逃れられずにそこかしこ秋 2 冷凍庫の奥に隠した金魚たち人を恨むか夏を騙るか 3 満月は欠けてゆくのみ きみはまだ白紙の手紙燃やせずにいる 4 二つめの月は青色回転灯まちの上気を牽制している…

短歌 すっぴん

1 すっぴんで葬った過去 果てしない季節の巡りに逆毛を立てる 2 ラジオからやっぱりきみのSOS 聞こえないふりして眠りたい 3 ワイシャツのボタンを掛け違えている 気づいたけれど教えてあげない 4 この街がパズルだった…