短歌 のど飴

1 のど飴をくれた人から幸せになれる仕組みを早く作って 2 口当たりのいい言葉を多用する優しい人を見たことがない 3 自己犠牲という言葉を知らずとも「みんな違ってみんな」がそれだ 4 誰かさんの機嫌のために潰されるこころ…

短歌 霜月

1 心にも花が咲くとはいうけれど根を張る場所を誰も知らない 2 踏切の赤いランプが明滅に溺れるたびに仔猫がよぎる 3 桜などモブでしかない霜月の街路にひとり佇む天使 4 そのままのあなたでいいと言われてもトゲが刺さったま…

短歌 きみのとなり

1 行き先を知らないバスに乗るようなきみのとなりで過ごす日常 2 いつかまたきみが壊れてしまったらリビングの薔薇を新しくする 3 美学には程遠い場所にある生き様をどうか笑っていつもみたいに 4 駅前のネオンがちかり瞬いて…

短歌 空が青すぎた日

1 青空はとうにふたりを見放して気づけば秋も過ぎ去ってゆく 2 泣いたなら強くなれるの仰ぎ見た空にひとつも雲はいなくて 3 いい天気あまりに今日はいい天気きみが堕ちても気づかないほど 4 すずかけの葉っぱも枯れて踏まれれ…

短歌 天気雨

1 いつの日かわかりあえると信じてもブルーブラックインクは滲む 2 私から嫌いになると思うからもう少しだけここにいさせて 3 おやすみがうまくいえないまた明日会えるはずだと信じられずに 4 ジュテームの意味も知らずに愛犬…

コンビニ

1 このおかずあたためますか?と訊かれてお願いしますと涙ぐむ夜 2 新作のスイーツ登場またひとつ我の行手を阻む刺客め 3 同じ色同じカロリー同じ味 棚に並んだドリアの小海老 4 午前2時になるとひとつの街明かりとなって孤…

短歌 コーヒー

1 ブラックに口をつけたら短めのワンピを着てもいいと思った 2 溶けてゆくミルクを混ぜることもなくひとつになるのをじっと待ってる 3 いつも朝にきみが淹れる一杯は視界を明るく照らすルーティン 4 切りすぎた前髪にまだ気づ…

1 もしきみが降ってくるなら曇天も悪くはないな(傘はいらない) 2 新しい傘を買った日誰よりも雨に焦がれているワンピース 3 うろこ雲のしっぽ目で追う横顔をずっと眺めていようと誓う 4 もしきみが雨予報なら大きめで丈夫な…

ピアス

1 まだなにもわかっていないことだけはわかったそんな気がするだけだ 2 すごろくのあがりのマスのすぐそばにふり出しに戻るマスがある 3 コスモスの花冠に触れたくて触れたら朽ちるそんな関係 4 白鳩の羽ばたく姿をレコードに…

短歌 沈黙

1 赤い羽根飾ったひとの何割が鳥の痛みを思うのだろう 2 いっせーの、でジャンプをしよう二分後に特急新宿行きが来るから 3 テーブルに並ぶナイフとフォーク見て「切って刺す」って呟いたきみ 4 花束と拳銃ならば花束を選んで…