中央線

街中のネオンサインを消し去って残る文字こそ私の名前 泣きながら生まれてきたしこの頃は笑ってみても咎められない 通過駅に懐かしい名を見つけて頭の中で絶叫をする 繋ぐ手に嘘偽りはありません 冷や汗動悸 い…

ピアノ

調律が必要みたい 少しだけ生きづらいのはたぶんそのせい 無理をしてキスをねだった日もあった 笑い話になりますように 形から入るタイプと連弾で触れた指から紡ぐナラティブ 口下手で不器用なのもちゃんと好き…

梅雨

情報のソースを出せと責められてあなたを好きな理由が滲む 傘の花咲く街を行くふたりきり こうも雨では影も伸ばせぬ 特急の窓に打つ雨の滴がそれでいいよと囁いている 雨の夜に巣食った油断をこれから恋と呼ぼう…

優しさ

優しさは真綿となってその首に巻きつくために存在してる 忘却はなだらかな線を描いてやがてあなたの鎖骨に刺さる 愛してる愛してたまだ愛してる 振り子の等時性を疑う 曇天でよかった私もう少し誰も呪わず生きて…

無添加

この窓は君に続いているだろう 何があっても開けないだけで 三日月を飾ってみるとモミュの木は優しいほうへ輝きを増す 限られた命と知ってなお犯す過ちまでももはや愛しい 駅舎から海が見えると君は言う その水…

抵抗

支配者の寝顔に油性マジックで綺麗な花を描いてあげたい 怒るべきときがあるから今はただは葦の隣でゆらり揺れてる ステータスなんかできみを見ていない 学歴 お金 ぜんぶモノクロ 誰がどう言ってもがいいさこ…

灰色

これ以上嘘はつけない幸せになったところでそれ嘘だから テーブルにとまった羽虫を潰してほんの小さな罪に溺れる もう誰も思い出さない忌念日が私の手帳にシミをつけてる 笑うしかない僕らには嘆く暇なんてないか…

鈴なりの柿をもぐ手の白い様 冬よ二人に早く来てくれ 読書する君の視線がたどる文字 それすら嫉妬する理由だよ 肺呼吸すら苦しいと頑なな君をこのまま抱いてもいいか 赤ペンを握るその手の体温を奪うことなど考…

宝石

ターコイズなんだね君の両の目はどうりでひどく傷つきやすい 信号がエメラルド色に灯るとき人々の歩は二拍子になる どこかにはダイヤのような輝きがこんな僕にもあるのだろうか アメジストでよかった君の誕生石 …

スイーツ

しゃぼん玉ぱちんと割れて独りきり冷めた紅茶の行く末を知る カスタードプリンに宿る悪意とは甘い時点で君と等しい マカロンの作り方より単純な私のこころ早くいなして あかんべえザラメのような恋をした 甘った…