短歌 卒業式
1 書くことを探して結局「これからもよろしくね」って嘘を残した 2 黒板の右下に名が載るたびに笑われたからもう笑おうか 3 教室の窓ガラス一枚ですら割れずに過ぎる正しい青春 4 嘘をつき立ち回りよく空気読む 全部教室で学…
1 書くことを探して結局「これからもよろしくね」って嘘を残した 2 黒板の右下に名が載るたびに笑われたからもう笑おうか 3 教室の窓ガラス一枚ですら割れずに過ぎる正しい青春 4 嘘をつき立ち回りよく空気読む 全部教室で学…
1 不機嫌なきみの向かいで風水のせいにしてみるケンカの理由 2 お湯足せばまだ味が出るのに席を立つような人とは生きてゆけない 3 よく食べてよく寝て笑いお薬を飲んでいるけど苦しい 許せ 4 血を吐いたこともないけどつらい…
1 おさなごの駄々こねる声なつかしくあの子も私に溶けるひかり 2 青春がうまく弾けないアルペジオだったと気づく視聴覚室 3 正答が正当化するプロセスのよこで首吊りしていたあなた 4 窓の外に顔つき出して見上げても如月なん…
1 寝坊助のきみのほっぺをつねるとき我は稀代の悪者となる 2 もしきみが病める朝にはアラームを止めて私もそっと閉ざそう 3 ワイシャツの襟を直してあげるとき きみは黙ってペンギンになる 4 三日月を美味しそうだというきみ…
1 愛がもし海によく似たものならばなるべく広く深くありたい 2 使い捨てカイロに礼を言ってから捨てるあなたのあたたかいクセ 3 錆び付いて誰も乗らないブランコを揺らすみたいな愛の告白 4 秘密などなにひとつない愛しさがあ…
1 どうしてもあなたのことが許せない なぜ目薬にわさびを混ぜた 2 入口が出口で入口が出口 人は自覚の足りない迷子 3 生ハムが生きたハムだと思ってたあの頃皿はまだ白かった 4 脳内に住むおっさんの口ぐせは「まぁいいじゃ…
1 言い訳を並べるだけの「すみません」手にかけたくはなかったけれど 2 鉛筆をナイフで削る指先はおそらく誰も傷をつけない 3 レシピには載らないものを手に入れて料理サイトでエラーになった 4 幼い日ごつごつしてた父の手を…
1 きみはまた私がすきだなどという そんなことより月がきれいだ 2 ピアノよりきれいな声で泣けるなら今すぐここで泣かせてあげる 3 春を待つきみのとなりで雪を知る たぶん私の早とちりかな 4 整った食器棚には嘘がある 短…
1 君の横空いているなら1名で今すぐ予約させてください 2 言い訳を探してるうち春が来て夏去り秋に枯れ果てるひと 3 折る指も足りなくなって心臓を差し出しました きみに逢いたい 4 髪の毛も爪も裸もきみのため気を衒わずに…
1 首を吊るための道具と知っていてあなたに贈る手編みのマフラー 2 飴玉を転がす舌先を眺める 赤色3号はたぶん私 3 手を繋ぎおんなじ月を見上げても一つになれない 寒さのせいだ 4 道端に落ち葉に隠れ朽ちていた小鳥の死骸…