短歌 灰色

1 これ以上嘘はつけない幸せになったところでそれ嘘だから 2 テーブルにとまった羽虫を潰してほんの小さな罪に溺れる 3 もう誰も思い出さない忌念日が私の手帳にシミをつけてる 4 笑うしかない僕らには嘆く暇なんてないからも…

短歌 スイーツ

1 しゃぼん玉ぱちんと割れて独りきり冷めた紅茶の行く末を知る 2 カスタードプリンに宿る悪意とは甘い時点で君と等しい 3 マカロンの作り方より単純な私のこころ早くいなして 4 あかんべえザラメのような恋をした 甘ったるく…

短歌 ピアス

1 カルーセル止まらぬうちに咳隠す くるくるくるって楽しいねって 2 難しい顔をして聴くJ-POP あたしひとりで死んでいくんだ 3 手を振って笑ってないで今すぐにロックスターとして突っ込んで 4 受話器から聞こえる声を…

短歌 休日

1 mixiにつけてる君のぼやきなど今どき誰が読むというのだ 2 真剣な顔でスマホを操って今日この頃の愚痴を彩る 3 ぽつぽつと消えてゆく泡を含んで甘ったるいと文句をつける 4 ふたりして不機嫌な日は毛布から出ずにキャン…

短歌 目

1 生真面目は褒め言葉ではありません そろそろ上着を脱いだならどう 2 目に映るすべて愛してみたかった かつてあなたがそうしたように 3 嘘をつくとき両の目がよるという癖に気づいた私はえらい 4 目薬を五階からさすチャレ…

短歌 影

1 永遠という幻は芳しく多くの人を惑わす魔物 2 ひとはひと わたしはわたし それだけのことを解すのにきのこが生えた 3 横顔を射抜く真冬の夕焼けがずっとあなたを責め続けてる 4 もう今日は帰らないでね いつもよりたくさ…

短歌 青春

1 輝きを強制される僕たちは合言葉まで上書きされる 2 苦しいと笑ってしまう癖なのに礼賛されて真似までされて 3 風を受け微笑んだこと馬鹿にされいつの間にやら馬鹿にする側 4 真剣な悩みを友に打ち明けた 友であったと誤認…

短歌 赤血球

1 醜さの喩えに使うためだけに私に合鍵なんてくれたの 2 私たち一緒の部屋で呼吸することさえ今や疑っている 3 なにもかもどうでもいいと言うのならその指輪から外してみてよ 4 骨として去っていく者 「思い出」と「平等」の…

短歌 凝視

1 だれひとり僕を知らない街にいて「こどく」の意味を僕は知らない 2 輝けと命令するな僕はまだ正しい呼吸もわからないのに 3 夢を見て初めて気づくこともある 今日も明日も燃えるゴミの日 4 カラカラと軋み続ける僕の骨 ど…

短歌 動機

1 夢を見て夢が破れて夢のなか夢にまでみた夢の世界よ 2 夏空を誰も見上げず笑ってる ノートの隅が日のあたる場所 3 あの夜を小瓶に詰めて朝が来ることを嫌がるまぶたに塗った 4 鐘の音が響いていると君は泣く カーテンだけ…