悪夢をいざなう(元)精神科医、死体と会話する解剖医、人格がほつれ出した若き刑事、そして天使になってしまった「君」。
彼が、誰の笑顔も思い出せないのは何故だろう。
これは不条理が容赦なく降り注ぐ魔都市・東京で繰り広げられる、どこまでもくだらない舞台だ。
「決して、俺を、忘れるな」
彼が血とともに吐くその言葉を、しかし彼自身が誰よりも嘲っていることに、彼は気づいていない。
信じたいのだ——愛とは、正義とは、無条件に肯定されるべきものであると。その手で、真に愛しい人の変わり果てた姿を抱きしめながらも、なお。
「愛の意味」と「正義の定義」を追い求め続けた、愚かな「彼」の顛末を話そうか。