可哀想

情があるからこそ成り立つ舞台もあるでしょうに……。 情欲と情動の区別もつかなくなった憐れな貴方から昨晩、手紙が届きました。 以下、全文転載――――― 相変わらず飽きずに満たしていますか? 前提として「愛している」はルール…

垂れ糸

~注意事項という名のプロローグ~ ※これは、虚構を重ねる言の葉によって紡ぎだされる小説の『一考察』に過ぎません。 ~第一章~ 文字という文字に踊らされ続けた とある作家が 辿り着いた一つの真実、 あるいは狂信的な勘違い …

「それで、その死オカとかいう不気味な名前のホシは、どうやってあんなたくさんの人数を殺害したんだ」 「ちょっと現場のデカの走り書きが汚くて、数字が読みづらいんですが、少なくとも数百人……いや千人はくだらないかと」 「なんて…

おともだち

カーテンでのみ仕切られた暗い部屋で、ある晩、ついに僕にお友達ができた。 彼はもじゃもじゃの金髪に赤い鼻、派手な水玉模様のサロペットに虹色のチョッキを着て黒い靴を履いていた。終始、楽しそうに笑顔を浮かべていた。 名前を知ら…

「ま」が「わ」になる必要悪

「今って忙しいですか?」―Misakiより 「にゃん!」―from gyi8u 「あなたのアカウントは異常ログインをされたました」―xxxyo8T 「コン!」―まゆゆゆ☆ 「Be sure to read this me…

虹を見たから

錠剤をヒートからゆっくりと取り出す。左手に載るのは、ラムネ菓子より小さな一粒。 彼は今、窓のない狭い部屋にいる。家族も恋人も友人も、皆が彼の自認を拒絶した。すなわち、「僕は神である」と。 当然ながら、周囲の人々は異口同音…

生ぬるい春に整うパズル

言葉より先に、花はそこに咲いていた。私は貴方が貴方自身を望む以上に、貴方のことを想っているの。 沸騰を知らせる甲高い音で、俺はうたた寝から強制的に現実へと引き戻された。緩慢に椅子から立ち上がり、コンロの火を止める。加工さ…

開かずの踏切、スカートの汚れ

久々に会う彼とこじゃれたカフェでディナーをするために、日もとっぷりと暮れた街を新しいスカートを履いて歩いていた。 遮断機のバーが降りはじめて、しかし私は走ることをしなかった。ワイヤレスイヤホンの右側が耳から落ちてしまいそ…

プレゼント

イルミネーションに浮き照らされた舗道を、小ぶりの箱を携えた男が歩いている。背筋をしゃんと伸ばして、規則正しい靴音を鳴らしながら。白い箱には真っ赤なリボンがかけられている。道を行き過ぎる誰もが、箱の中身は愛しい人への贈り物…

エビフライ

エビフライを揚げていたら、油が跳ねて目に入りそうになった。麻衣子は慌てて洗面所に駆けて、夢中で顔を洗った。というか水で乱暴に何度も拭った。 やだ、どうしよう、跡がついたらやだ。 顔にシミなんて、まだ勘弁だ。 台所から鈍い…