今日の短歌 判例

1 容赦ない季節ときの巡りに黙りこむコンロの炎とつとつ揺れる 2 おくれ毛にからみつく指ほんのりとみかんのにおい(きみだけだから) 3 カーラジオから流行歌「知らないね」と笑いあう午後たしかにふたり …

短歌 あひるの玩具/カレイドスコープ

1 叫んでも届かないから沈黙と仲良しになる あひるの玩具 2 覗き込むカレイドスコープの眩しさ失望よりも暇いとまが怖い 3 明日には忘れてしまう中指で押したあひるの玩具の湿度 4 もう二度と出会えない…

短歌 シナプスと猫

1 もう一度絶望したいリスタートしてこそ見える景色が見たい 2 心臓に近づける耳わたしにはわたしの生きる理由しかない 3 遮断機は規則正しく排除する生きる予定の人と猫とを 4 照らされたファストファッ…

短歌 すっぴん

1 すっぴんで街を歩けばなんとなくだけど心は百獣の王 2 アイブロウ上手くいったらそれだけでいい日認定したい明日は月曜 3 お化粧で隠れるものを数えてるわたしの後ろめたさの数を 4 すっぴんはたぶん最…

短歌 雪

1 絡まった毛糸をほどく窓辺にて「粉雪だ」ってきみはつぶやく 2 春を待つ(固いこぶしがほころびるよう)祈りにも雪降り注ぐ 3 雪だるまたぶん私のご先祖もそのご先祖もそのご先祖も 4 「極寒の雪国生ま…

短歌 霜

1 十年に一度の寒波メイクして街を歩けば頬に立つ霜 2 霜柱踏んづけ歩く朝のみち遅刻のわけを誰も責めない 3 晴れた日にこそ降りる霜出会いとは別れの合図(認めたくない) 4 しもやけになるまで待ってい…

短歌 大雪

1 Bメロを繰り返してる口笛が金曜の夜の雪に消される 2 「積もったね」返事をせずに訥々と雪を人さし指で追ってた 3 新雪に初めて足跡つけたからそこからここは支配空間 4 コンビニのおでんが今日は優し…

短歌 二月

1 傷つけた人の顔にはモザイクをかけやり過ごす二月の短さ 2 泣きたいと泣くの間の距離感を埋める二月の生ぬるい風 3 花ですか、それとも可能性ですかきみが二月に失ったのは 4 ただ画面のなかに映る海が…

今日の短歌 Fマイナー

1 おそろいのタオルはためく昼下がりナイフ片手に影も揺れてる 2 枯れていく花束見つめ幸せを過去形にするきみの黯い目 3 優しさの意味を辞書引くことはない花のあふれる街に暮らして 4 叫べたら壊れるこ…

今日の短歌 はらり

1 春だから泣いてもいいと告ぐひとは泣く原因になっているひと 2 脚光を浴びることなく散っていく白木蓮の手向てむかう季節 3 雨粒がみんな音符に化けるなら泣いても歌に聞こえるはずだ 4 ベランダに花び…