短歌 ミルクココア
1 初雪を待つ窓辺にて会いたさをミルクココアにぐるぐる溶かす 2 加湿器の勤勉なこと灰色の街に暮らして十一年目 3 吐く息の白さを比べあって今日特に用事がなくて嬉しい 4 新しい財布をセールで買ったら入れるお金が減ってし…
1 初雪を待つ窓辺にて会いたさをミルクココアにぐるぐる溶かす 2 加湿器の勤勉なこと灰色の街に暮らして十一年目 3 吐く息の白さを比べあって今日特に用事がなくて嬉しい 4 新しい財布をセールで買ったら入れるお金が減ってし…
1 胸深く埋うずめたはずの黒歴史優しい他人ひとが掘り当ててきた 2 教科書の隅のパラパラ漫画では上手にいったはずの告白 3 カニカマを蟹と信じて生きていた11歳は幸せだった 4 爪を噛む癖が治ったあの頃に確かに何か失った…
1 目が覚めてトーストを焼く日曜日きみの鼻唄もメジャー進行 2 ラジオからふたりの好きなナンバーがフルコーラスでかかる日曜 3 宝物? ゆびわ、ともだち、きみ。プリン食べているから、うん、順不同 4 「太陽とちょうどいい…
1 着火剤よりも苛烈なきっかけがきみであるもう後悔はない 2 孤独より孤立が怖い「助けて」が届かないなら声を燃したい 3 窓ガラスにイニシャルを指でなぞってぜんぶ夕焼けのせいにしたね 4 灯火ともしびを絶やさぬように呼吸…
1 綻びはつまり終わりと笑うきみ拒絶できない桜の便り 2 開花待つ指を祈りの形にし春の日差しを零さないよう 3 「役に立つ」なんて定規は焼き捨てて回転しない木馬を磨く 4 医院から出てきた人と目が合った春陽がさして首を縦…
1 音階の隙間に遊ぶ雨粒がビニール傘を楽器に変える 2 ありがとうなんてやめてよあたりまえでしょういっしょにねむるのなんて 3 ワッフルの窪みに蜜を垂らすまだ許せないことだけ数えつつ 4 プリーツに八分音符をまとわせて風…
1 ほっといてくれといわれてほっとくとなんでほっとくのっていわれる 2 髪切ったわけをきちんと質してよきみのせいだと糾したいから 3 「雨ですね」それきり口を開かずにふたりぼっちで遠雷を聞く 4 フィクションとノンフィク…
1 降り注ぐ陽光のなかほどかれる過去は過去だと捨て置けますか 2 舞い落ちるその一葉を目で追ってそのままふたり踊り続ける 3 終わりとは意味のあること秋楡に託す言葉を一緒にさがす 4 月までも凍える夜に寄り添ってホットミ…
1 ペディキュアは夏へのとびらアスファルトを滑走路にして走り出す 2 きみでいい なんて真っ赤な嘘だったほんとはきみじゃなきゃだめなのに 3 横にしか首を振らない扇風機 冷えたゼリーにスプーンを挿す 4 もしきみが す …
1 カーテンが窓辺に遊ぶ日曜にカウントダウンしてゆくいのち 2 願いごとまみれの笹を携えた子らに注いでいる酸性雨 3 新宿で辞書に載らない寂しさを遺棄するために息する僕ら 4 頑かたくなに閉じたこころがほどけだす夏だひか…