短歌 火へん
1 着火剤よりも苛烈なきっかけがきみであるもう後悔はない 2 孤独より孤立が怖い「助けて」が届かないなら声を燃したい 3 窓ガラスにイニシャルを指でなぞってぜんぶ夕焼けのせいにしたね 4 灯火ともしびを絶やさぬように呼吸…
1 着火剤よりも苛烈なきっかけがきみであるもう後悔はない 2 孤独より孤立が怖い「助けて」が届かないなら声を燃したい 3 窓ガラスにイニシャルを指でなぞってぜんぶ夕焼けのせいにしたね 4 灯火ともしびを絶やさぬように呼吸…
1 綻びはつまり終わりと笑うきみ拒絶できない桜の便り 2 開花待つ指を祈りの形にし春の日差しを零さないよう 3 「役に立つ」なんて定規は焼き捨てて回転しない木馬を磨く 4 医院から出てきた人と目が合った春陽がさして首を縦…
1 音階の隙間に遊ぶ雨粒がビニール傘を楽器に変える 2 ありがとうなんてやめてよあたりまえでしょういっしょにねむるのなんて 3 ワッフルの窪みに蜜を垂らすまだ許せないことだけ数えつつ 4 プリーツに八分音符をまとわせて風…
1 ほっといてくれといわれてほっとくとなんでほっとくのっていわれる 2 髪切ったわけをきちんと質してよきみのせいだと糾したいから 3 「雨ですね」それきり口を開かずにふたりぼっちで遠雷を聞く 4 フィクションとノンフィク…
1 降り注ぐ陽光のなかほどかれる過去は過去だと捨て置けますか 2 舞い落ちるその一葉を目で追ってそのままふたり踊り続ける 3 終わりとは意味のあること秋楡に託す言葉を一緒にさがす 4 月までも凍える夜に寄り添ってホットミ…
1 ペディキュアは夏へのとびらアスファルトを滑走路にして走り出す 2 きみでいい なんて真っ赤な嘘だったほんとはきみじゃなきゃだめなのに 3 横にしか首を振らない扇風機 冷えたゼリーにスプーンを挿す 4 もしきみが す …
1 カーテンが窓辺に遊ぶ日曜にカウントダウンしてゆくいのち 2 願いごとまみれの笹を携えた子らに注いでいる酸性雨 3 新宿で辞書に載らない寂しさを遺棄するために息する僕ら 4 頑かたくなに閉じたこころがほどけだす夏だひか…
1 降り注ぐ火の粉を数えているきみ正常なんて野暮な季節だ 2 ゆりかごを胸に置きざり泣きかたもわからずきみは大人になった 3 打ち上がるたびにこっそり見つめてたまつ毛の長いきみの横顔 4 お土産は大事な人を数え買う片手で…
1 新宿を好きになれたら日没が早くなるのも許せるかしら 2 夏が逝く何か言いかけやめたきみが間違いだらけのパズルを解く 3 発つことになったと告げてきみ見れば真剣に納豆を混ぜてて 4 お隣に行くだけでしょう電話なら毎日す…
1 打ちつける粒のひとつを指で追い泣き出すきみの背中を見てた 2 スーパーで買ったお寿司のサーモンを狙いあってる水曜の夜 3 明大前そんなに人を詰め込んでひとつひとつが尊いなんて 4 大雨の夜はなにかが目を覚ますそれより…