ふたり

しゃぼん玉

卯月の手前の日曜日、珍しく雪の積もった私たちの住む街は、少し怖いくらいにしんと静まりかえっていた。マンション四階の窓から外を眺めると、はらはらというよりはぼたぼたと雪が落ちて窓に打ちつけていた。「うわー、季節外れ」私が声をあげると、きみは文…

ジグソーパズル

完成したら、終わり。終わってしまえば額縁に飾られて風景画未満になる。だからふたりのジグソーパズルが完成しないように、私は思い出のひとかけらをポケットにしまった。「なんだっけ、きみが行きたがってたカフェ」スーパーマーケットで買った惣菜ととき卵…

デコピン

川越まで日帰りで小旅行に行ってきた。自宅から車で一時間半も飛ばせば辿り着ける場所にあるので、思い立って小江戸散策を決めたのだ。昨日でお互い仕事納めだった自分たちへの、ちょっとしたご褒美のつもりだった。川越散策には最高の天候で(少し風は冷たか…

グッバイ2017

2017年が終わる。年の瀬に、実家に帰ってこなくていいと言われた私たちは、二人きりでの年越しを過ごすことになった。年末の買い物を終え、帰り道で私たちはわざと遠回りをして、最寄駅の踏切道の前で立ち止まった。遮断機が下りてきて、けたたましく警告…

爪切り

隣の部屋から、パチンパチンと爪切りの音が聞こえる。今の私にはそれすら疎ましく感じられた。毛布を体に巻きつけて、ふてくされて横になって、私は長いため息をついた。喧嘩した。ことの発端は情けないほど些細なことで、犬どころかきっとミジンコも食べちゃ…

最果てレストラン

世界の終わりのその後に、ふたりは朽ちた一軒家で小さなレストランをはじめた。決してお客さんは来ない。それでもふたりはキッチンに並び、残された時間を丁寧に暮らしている。「コロッケは意外と、手のかかるメニューだね」じゃがいもの皮を一つひとつ剥きな…

はじめて

オーケストラの演奏が零時ぴったりに見事にフィニッシュし、拍手と歓声と派手な花火の演出が、2018年の始まりを告げた。「あけましておめでとう」私が言うと、彼はあくびをしながら「うん」とだけ応じた。それからまもなく、二人して眠りについた。初日の…