私が女の子だったころ
私にはなんでも空想できて
その代りなぁんにも無かったのよ、と彼女は笑った。
彼女に言わせればこの世には
逆回りする懐中時計を
首からぶら下げてブランコを漕ぐウサギがいて
いつも寂しい、寂しいとぼやいているのだそうだ。
地球が丸いなんて嘘よ。
少年の衝動はバスドラムの連打より激しいから。
雨雲が柔らかいのは本当よ。
母のふくよかな手のひらみたいにね。
筋は通さねばならぬが
意味は通じなくても良い
そんなルールを勝手に作って
彼女はよく土曜日に詩を詠む
私が女の子だったころ
ドレミファソはお友達で
ラとシだけがそっぽを向いたわ、と彼女は笑った。
足りない音階を埋める旅に出ようか
逆回転し始めた世界にサヨナラ
きっと明日もカラカラの つまらん晴れになるだろう
よくあることだ、と呟いたのは誰でしょう。
私が女の子だったころ……