からから からん

からから

からん

からからからんからんからら
つまらない音を立てて
私の骨が転がりました

もの寂しい音を立てて
からっぽのペットボトルの横に
私の骨は転がりました

名前を知らない蝶々が
私の心臓のふりをして
ひいらひいら羽を休めています

(うるる、る、うるるうるる)

名前を知らない蝶々が
私の眼球として触角を
うるるうるると蠢かしています

(ひいら ら らららら ひいら)

からから

からん

初秋の風が吹けば
私のすべては転がってゆきます
きっとなにごとでもないのです
(風さえ吹けば)

かって骨を覆った
肌に吹きつけくる風はいつだって
そういつだって優しくありました

私の目の前で
私としてからんと転がる骨が
何を欲しがることがあろう

ああそうだ
くぱっと割れたあけびの実を
欲しがることはあるだろう

からから からん

かつて骨を庇っていた
痛みを引き受けてきた皮膚はそう
疲れてしまったのかもしれないね

からっぽのペットボトルが
優しい人に収集されてる
私は一切をなかったことにされて
優しい人に踏んづけられて
丁寧に粉々にされてゆく

蝶はまた知らん顔で飛んで
飛んで知らん顔でまた蝶は

私はついに秋風になり
どこかのだれかの肌に触れ
阿呆みたいに涙を誘う

からん

からから

からん

寂しかろうと、優しい人が、
ちりとりで集めてくれたけれど
私、全然寂しくないんです。