短歌 恋人

1
きみの住む街へと進む各駅に乗り換えるとき降る三連符

2
特別じゃなくてきみにとっての当たり前になりたいだけです

3
秘密って甘いにおいがするんだね「ごめん」だなんて通用しない

4
なにごともなかったみたく読書する文字たちにすら嫉妬する夜

5
前ぶれは必要ですか好きなのに泣いてしまうのは嫌ですか

6
ホーム越し小さく右手を振り返す胸の痛みを知る京王線

7
腕時計ちらりと見やる仕草さえ私を燃すにじゅうぶんすぎる

8
「好きです」の続きが言えずあふれくる涙を拭ってくれた、きみを

9
血まみれで生きてるきみを抱きしめてともに汚れる覚悟ならもう

10
結末はふたつの影がいまひとつ窓辺でテールランプに揺れる