飛べばいいんだ

飛べばいいんだ
苦しいのならば
ここ以外の空へ
飛べばいいんだ

あなたは懲りもせず
素数を数え続けては
時折偶数に瞠目して
修正ペンを探し出す

飛べばいいんだ
可笑しいのなら
ここ以外の地へ
飛べばいいんだ

あなたは相変わらず
最大公約数を殺して
数字という数字達を
孤独に突き落として

「飛べばいいんだ」などと言う。

星座を憎むその論法を
あなたは誰にも閉ざし
私のマニキュアにさえ
通し番号を与えてくる

飛べばいいんだ
飛べばいいんだ
どこにも行けないなら
飛べばいいんだ

飛べないのなら
飛ぼうとすれば
あらゆる孤独が
己の最奥で座し
翼のフリをして
誤魔化せばいい
飛べばいいんだ

秋の冗長な夕暮れ!
喉の渇きを潤すため
あなたは自分の喉に
冷たい孤独を宛てて
そのまま真横に——

「飛べばいいんだ」

どの星座にも結ばれない
そんな星だけをあなたは
星と認めて滅びを待った
待って待って待ってほら
あなたこそが星だったと
気づいたときにはすでに
滅びた星々がまどろんで
あなたに永い眠りを強制
するたった一言こう告げ

「飛べばいいんだよ」