1
ペディキュアは夏へのとびらアスファルトを滑走路にして走り出す
2
きみでいい なんて真っ赤な嘘だったほんとはきみじゃなきゃだめなのに
3
横にしか首を振らない扇風機 冷えたゼリーにスプーンを挿す
4
もしきみが す き と言うならそのセリフそのままきみにお返しします
5
きみの名を口にするとき心臓が世界最狭謀反を起こす
6
夕暮れの「もういいかい」が遠ざかる壁にもたれてサイレンを聞く
7
水たまり(次の連休いつだっけ)映った顔がちゃんと泣いてる
8
雨のなか白い紫陽花を睨んで私の名前を呼ぶのはやめて
9
曇天を裂くように咲く紫陽花に触れて色づくきみのため息
10
蝉の声に唆されて傷つけた人の数だけ呼吸を止めた