1
音階の隙間に遊ぶ雨粒がビニール傘を楽器に変える
2
ありがとうなんてやめてよあたりまえでしょういっしょにねむるのなんて
3
ワッフルの窪みに蜜を垂らすまだ許せないことだけ数えつつ
4
プリーツに八分音符をまとわせて風を受けたら春の旋律
5
特急に追い抜かされる各停のガタンゴトンがぼくの鼓動だ
6
まばたきを数えてもいい距離にいるけれどいまだに謎が解けない
7
相応しくなりたいのです誰のせいにもせず涙乾かすきみに
8
ぽけっとにまぎれたかけらこっそりとさぐるネイルが色づいていく
9
魚には痛覚がないのを知ってほっとしたから頭からいく
10
でも春は叫びが届かない季節/たとえ狂えど包まれるだけ