1
甘噛みのあとで目が合うカーテンを揺らす涼風だけが知ってる
2
火の揺れるのを見つめてる予感とはたぶんあなたのまばたきのこと
3
ろうそくの火を吹き消してさよならは夏に対してだけ告げたはず
4
水槽を覗くふたりは寂しさが足し算できないことを知ってる
5
過去形にしたい痛みはきみのそれと同じ匂いの線香花火
6
将来の夢を潰され嗤われてそれでも今はちゃんとしあわせ
7
いじめっことは歩く恥 恥のまま歳をとるんだから可哀想
8
八月が終わり九月が始まるがただそれだけのこと大丈夫
9
遮断機にふたり拒まれ目の前を中央線がいきいき走る
10
のびすぎた前髪揺れるきみのことあなたって呼ぶのは初めてで