1
この下になにが埋まっていてもいい月下美人が無事に咲くなら
2
短冊に書いた願いは「わがままはわたしにだけ言え」というわがまま
3
花火背に少し浮き出た頬骨をなぞると髪をなぜてくるきみ
4
半額のシールを狙い手に取ったサラダになんて謝ればいい
5
三日月を逃した夜だ帰らなきゃきみがナイフを研いでいるから
6
くるぶしがきいんと冷えるサンダルに値引きのタグがついたまま夜
7
潮の香はどこか血に似てうみねこは人を見下ろし悠然と飛ぶ
8
呼び捨てにしてぎゅっとなる文庫本めくる音さえすきと聞こえる
9
泣けたならいいのにねって笑うきみソーダ水の泡を数えながら
10
消えられる泡が羨ましいというきみの憂いを半分よこせ