「私たちが知っていることは、これくらいよ」
皐月は宣告するかのような口調で、西郷に迫った。
「もし今の話を漏らすようなことがあれば、『ただじゃおかない』からね。ただ、誰が何をするかは知らない。あなたの良心の赴くままに事態が動くだけだから」
若宮も険しい表情を西郷に向けている。
「個人を嗅ぎまわってカネを得ることより、ジャーナリストには大事な矜持があるんじゃないか」
「……ありません」
「ん?」
「俺には、ジャーナリズムを語る資格なんてありません。俺はそもそも、ジャーナリストにはなれなかったみたいだ」
すっかりうな垂れる西郷に、皐月は白魚のような人差し指と中指を立ててこう告げた。
「二つ、いいことを教えてあげるわ。『真実を暴くことが常に正しいこととは限らない』。それと」
皐月の鮮やかな唇の口角が流麗に上がった。
「『謎は謎のままのほうが美味』なの。知ってた?」
第五話 決意と覚悟 へつづく