短歌 ああ

1
春なのにいや春だから怖くなるきみの鼓動が優しすぎると

2
波風を立てない範囲で暴れてたあの子もあの子も四角いあたま

3
誰よりもきみが好きだと伝えてもきみは誰よりきみが好き ああ

4
散ってゆく桜は好きだそのうちにふたりみたいに忘れられるし

5
星を待つベランダに風なでられて泣いてもいいとやっと思えた

6
春である断言すればするほどにきみの視界に私がいない

7
本棚に眠る数多の物語どこかにきみは心を置いた

8
言いかけたそれをふわりと殺すためその唇をめがけて笑う

9
金曜日いつものことと笑うからきみの恐怖も甘く煮るから

10
港区のタワマンにもし暮らしてもコンビニで肉まんを求める