短歌 ほっと
1 いい加減私の気持ちに気付いて そして隣で天気を当てて 2 未来ならフリーハンドに描くから軌道に貴方を必ずのせて 3 暗闇の中にいるからこそ光る君の絶望は宝物だ 4 目を閉じてひとりっきりのフリしてもまぶたの裏であなた…
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1 いい加減私の気持ちに気付いて そして隣で天気を当てて 2 未来ならフリーハンドに描くから軌道に貴方を必ずのせて 3 暗闇の中にいるからこそ光る君の絶望は宝物だ 4 目を閉じてひとりっきりのフリしてもまぶたの裏であなた…
1 寒いより寂しいが勝っているとまだ貴方には伝えられない 2 強がりは積もれど雪にならなくて遠くで白が手を振っている 3 背中から羽が生えても安心だ 君が残らず毟ってくれる 4 いま君が隣で風邪をひいていることが実は嬉し…
1 二番目じゃだめなんですと涙声 掴んだ袖に嵐の予感 2 告白がまるでこれでは告発だ 誰が君の心を踏んだ 3 時ぐすりが効いてきたから大丈夫 私あなたと眠っていたい 4 ただ一人を信じる勇気が生まれて師走の空も笑ってくれ…
私はあなたの傷のありかを知っている。あなたが一番痛がる場所を知っている。知っていながら、そこをえぐる。知っているからそこそ、そこをえぐる。三拍子でえぐる。それが罪になるのなら、もう恐れるものは何もない。失うものといえば太…
やせ我慢を決め込んでいたけど、日増しに高まっていく歯の痛みに、芦花ありす(16歳、花の女子高生)は嫌々ながらついにその日、歯科医院のドアを叩いた。 『ハートデンタルクリニック』という、街はずれにある小さなクリニックである…
新宿駅のハンバーガーショップで、女子高生が二人、シェークを飲みながらダベっている。 私の隣できゃいのきゃいの、実に楽しそうである。 その日、仕事で嫌なことがあった私はやっかみにも近い感情で、彼女らを疎ましく感じていた。 …
貴方が寝ぼけ眼で毎朝淹れてくれるコーヒーは、私にとって幸せの香りだ。駅前で買ってくるそれらは、専門店で挽かれてその場で真空パックされる。鮮度を保つために。 私は、たまに貴方を真空パックにしたいと思う。刻一刻といつかやって…
「君を、抱いていいの」 まるで罪の告白、或いはあどけない脅迫。それは前奏のないポップスのように明け透けだ。 私は許しを与えるように首を縦に振った。 「本当に?」 疑心暗鬼に支配された言葉。信じられないということは一種の弱…
1 許されていたと気づいてあの頃の自分にかける「大丈夫だよ」 2 嫌なことばかり目につく金曜は好きなケーキを買うべきである 3 「死にたい」と「死ぬ」の間に横たわる遥かな川を白鷺が征く 4 道端に落ちたザクロを踏んづけた…
オーケストラの演奏が零時ぴったりに見事にフィニッシュし、拍手と歓声と派手な花火の演出が、2018年の始まりを告げた。 「あけましておめでとう」 私が言うと、彼はあくびをしながら 「うん」 とだけ応じた。それからまもなく、…