ジグソーパズル

完成したら、終わり。終わってしまえば額縁に飾られて風景画未満になる。 だからふたりのジグソーパズルが完成しないように、私は思い出のひとかけらをポケットにしまった。 「なんだっけ、きみが行きたがってたカフェ」 スーパーマー…

生ぬるい春に整うパズル

言葉より先に、花はそこに咲いていた。私は貴方が貴方自身を望む以上に、貴方のことを想っているの。 沸騰を知らせる甲高い音で、俺はうたた寝から強制的に現実へと引き戻された。緩慢に椅子から立ち上がり、コンロの火を止める。加工さ…

短歌 雪の日のラジオ

1 ふつおたはフランスのオタクじゃないの。「よくある質問」に入れておく? 2 大雪の予報を告げる予報士の隠せぬ笑みが音声に乗る 3 眠れない夜に何処かのくだらないトークに励まされる(ありがとう) 4 まだまだだまだまだす…

短歌 二月

1 傷つけた人の顔にはモザイクをかけやり過ごす二月の短さ 2 泣きたいと泣くの間の距離感を埋める二月の生ぬるい風 3 花ですか、それとも可能性ですかきみが二月に失ったのは 4 ただ画面のなかに映る海があり見つめるだけのぼ…

短歌 大雪

1 Bメロを繰り返してる口笛が金曜の夜の雪に消される 2 「積もったね」返事をせずに訥々と雪を人さし指で追ってた 3 新雪に初めて足跡つけたからそこからここは支配空間 4 コンビニのおでんが今日は優しくて窓の外では雪降り…

短歌 冬

1 UFOを見かけた夜の帰りみち白い息だけ捕まえ歩く 2 人材、と呼ばれるときに血と骨でできていますと答えたくなる 3 おでんではちくわぶが好き共感は別のところでお願いします 4 こたつとは要塞である最強のかたつむりとは…

今日の短歌 UFO

1 思ってたよりも楽しい毎日だ犯人はきみ、きみが容疑者   2 撤去されツリーはただの樹になって半額ケーキつつく納め日  3 ほのぼのと生きてゆきますこの世からポッドキャストが消えない限り 4 ぎゅっとして離れるときの一…

今日の短歌 おしるこ

1 著作権切れたとたんに人々を襲いはじめたあの黒ネズミ 2 自販機の右端にいるおしるこはちゃんと私を見下している 3 好きだった好きすぎてもう苦しかった動機はそれでじゅうぶんだった 4 「『確かに』が『しかし』とセットな…

ピカピカ

ユニコーンを父に、ペガサスを母に持つアレクには、しかし角も翼も授けられなかった。兄弟たちはアレクを憐れみ、また疎んじた。しかし、父と母だけはアレクに惜しみない愛情を注いだ。そのおかげで、アレクはのびのびと育つことができた…

今日の短歌 いつものラジオ

1 風呂上がり米を研ぎつつ聴くラジオいつもの声に励まされてる 2 叫ぶよりもう倒れたい夜だけど深夜ラジオが笑かしてくる 3 通勤のお供はラジオ満員の京王線で笑みかみ殺す 4 三叉路を過ぎればきみがいる/いない/別の誰かと…