東京

1 ずぶ濡れになった私をからかってもらうつもりで傘を忘れた 2 秒針に月明かり降る秋が来る 私も好きにしていいかしら 3 駅前のおにくやさんのコロッケが今も恋しい東京暮らし 4 「寂しいね」寂しくない…

晩夏

1 正座してOasisを聴くひともいる 多様性って大事なんだな 2 ペンたてにネギ立てるのと泣き歌をほんとに泣いて歌うのやめて 3 「ベランダに蝉が突っ込みママが踏みました」絵日記でバレる凶行 4 光…

そら

1 一歩ずつ進んでいけばそれでよい誰もが空に裁かれている 2 足もとに蝉が転がる 雷鳴と明滅するあなたの横顔 3 雨ののちまた雨が降ることを知り炎天下さえ信じていない 4 真っ白なシャツにぽつんとつい…

友だち

1 「私たち友だちだよね」確認をする時点で甚だ疑問 2 【友だちは多いほうがいい】学校で一番初めに教わる嘘 3 思春期に負った傷は絶縁体 六弦を弾く指が汗ばむ 4 トレンドやゴシップ記事より夕暮れに吹…

夏祭り

1 待ち合わせ浴衣姿のきみ探し高鳴る僕の鼓動とスマホ 2 ピンク色のひよこの可愛げにかしげる首の脆さは尊さ 3 うす紙に掬われた金魚ぱくぱくと呼吸と復讐を希求している 4 祭ばやしのせいで逃げてくヨー…

中央線

1 操車場にはオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる 2 終点に着いたところでこの僕に行き場がないことに変わりはない 3 各駅に止まる人生でよかった あの軒先には風鈴がある 4 蝉の声かき消して…

カナ

1 バタフライピーのピーは伏せ字という嘘を信じている夏休み 2 ブルーハワイ食べ終えたあと正体をべろんと見せて火星に還る 3 プレミアムフライデーって覚えてる? 馬鹿にしないで歴史は得意 4 シャボン…

魔物

1 溶けかけの氷に棲んでいた魔物 誰も知らない夏の夕暮れ 2 熱発しようやくあえる人がいる 彼岸へ渡ったゆきちゃんという 3 コーヒーはブラックで職場はホワイトで見上げた空は曖昧なグレー 4 かたつむ…

ボート

僕はボートを漕ぐ 他に誰もいない湖面に 流行らない一艘を浮かべ 僕はボートを漕ぐ 他に誰も見ていないから 好き放題に漕ぐ 湖面を波紋が支配する 僕のオールで起こしたそれは いびつに整列をしていく 波紋…

中指

1 教科書を有害図書に指定せよ量産される「僕悪くない」 2 芽を摘んではみ出た枝葉を切り落としその仕上がりを「優良」とする 3 笑われぬために必死に笑っては自慰の途中で泣き出す娘 4 医師免許弁護士資…