今日の短歌 吊り橋

1 めでたし、のつづきをみんな生きている罪の意識にリボンをかけて 2 「生きている」わざわざ口に出すようになって久しい春一番よ 3 叫べたら壊れることもなかったと軋む吊り橋の上できみは 4 枯れていく花束見つめ幸せを過去…

初春の三句

陽光に竹がしなって雪どけよ 春の陽にまどろむ猫の大あくび 沈黙が雪どけせかす初デート

二月

1 傷つけた人の顔にはモザイクをかけやり過ごす二月の短さ 2 泣きたいと泣くの間の距離感を埋める二月の生ぬるい風 3 花ですか、それとも可能性ですかきみが二月に失ったのは 4 ただ画面のなかに映る海があり見つめるだけのぼ…

リボン

食べる、そのときに 口が開くと歯が見える いのちを噛み砕くための しゃべる、そのときに 口を開くと言葉が出る 誰かを傷つけるための 黙る、そのときに 口を開けると馬鹿みたい 本当は馬鹿なんだけれど 食べる、いのちを繋ぐた…

短歌 雪

1 Bメロを繰り返してる口笛が金曜の夜の雪に消される 2 「積もったね」返事をせずに訥々と雪を人さし指で追ってた 3 新雪に初めて足跡つけたからそこからここは支配空間 4 コンビニのおでんが今日は優しくて窓の外では雪降り…

雪の日のラジオ

1 ふつおたはフランスのオタクじゃないの。「よくある質問」に入れておく? 2 大雪の予報を告げる予報士の隠せぬ笑みが音声に乗る 3 眠れない夜に何処かのくだらないトークに励まされる(ありがとう) 4 まだまだだまだまだす…

短歌 箱庭

1 そのなかに神の文字あり僕たちは何を治しているのでしょうか 2 こころには絆創膏が貼れなくていつになっても血が止まらない 3 夕食後カップを持って行列になって薬を待つ午後七時 4 映画にもカフェにも買い物にも行けず何を…

短歌 冬

1 UFOを見かけた夜の帰りみち白い息だけ捕まえ歩く 2 人材、と呼ばれるときに血と骨でできていますと答えたくなる 3 おでんではちくわぶが好き共感は別のところでお願いします 4 こたつとは要塞である最強のかたつむりとは…

1 十年に一度の寒波メイクして街を歩けば頬に立つ霜 2 霜柱踏んづけ歩く朝のみち遅刻のわけを誰も責めない 3 晴れた日にこそ降りる霜出会いとは別れの合図(認めたくない) 4 しもやけになるまで待っていてくれた改札口のきみ…

短歌 雪

1 絡まった毛糸をほどく窓辺にて「粉雪だ」ってきみはつぶやく 2 春を待つ(固いこぶしがほころびるよう)祈りにも雪が積もる 3 雪だるまたぶん私のご先祖もそのご先祖もそのご先祖も 4 「極寒の雪国生まれ」寒さにはめっぽう…