神さまの処方箋
風邪をひいてしまった。思い当たるのは、薄着にベッドで、ひたすら泣き明かしたことだ。 失恋の前に「大」がつくレベルのダメージだった。もう恋なんて二度とするもんか、と強がれば強がるほど、傷は深くなるようだった。 ぼーっとした…
風邪をひいてしまった。思い当たるのは、薄着にベッドで、ひたすら泣き明かしたことだ。 失恋の前に「大」がつくレベルのダメージだった。もう恋なんて二度とするもんか、と強がれば強がるほど、傷は深くなるようだった。 ぼーっとした…
完成したら、終わり。終わってしまえば額縁に飾られて風景画未満になる。 だからふたりのジグソーパズルが完成しないように、私は思い出のひとかけらをポケットにしまった。 「なんだっけ、きみが行きたがってたカフェ」 スーパーマー…
言葉より先に、花はそこに咲いていた。私は貴方が貴方自身を望む以上に、貴方のことを想っているの。 沸騰を知らせる甲高い音で、俺はうたた寝から強制的に現実へと引き戻された。緩慢に椅子から立ち上がり、コンロの火を止める。加工さ…
1 ふつおたはフランスのオタクじゃないの。「よくある質問」に入れておく? 2 大雪の予報を告げる予報士の隠せぬ笑みが音声に乗る 3 眠れない夜に何処かのくだらないトークに励まされる(ありがとう) 4 まだまだだまだまだす…
1 傷つけた人の顔にはモザイクをかけやり過ごす二月の短さ 2 泣きたいと泣くの間の距離感を埋める二月の生ぬるい風 3 花ですか、それとも可能性ですかきみが二月に失ったのは 4 ただ画面のなかに映る海があり見つめるだけのぼ…
1 Bメロを繰り返してる口笛が金曜の夜の雪に消される 2 「積もったね」返事をせずに訥々と雪を人さし指で追ってた 3 新雪に初めて足跡つけたからそこからここは支配空間 4 コンビニのおでんが今日は優しくて窓の外では雪降り…
1 UFOを見かけた夜の帰りみち白い息だけ捕まえ歩く 2 人材、と呼ばれるときに血と骨でできていますと答えたくなる 3 おでんではちくわぶが好き共感は別のところでお願いします 4 こたつとは要塞である最強のかたつむりとは…
1 思ってたよりも楽しい毎日だ犯人はきみ、きみが容疑者 2 撤去されツリーはただの樹になって半額ケーキつつく納め日 3 ほのぼのと生きてゆきますこの世からポッドキャストが消えない限り 4 ぎゅっとして離れるときの一…
1 著作権切れたとたんに人々を襲いはじめたあの黒ネズミ 2 自販機の右端にいるおしるこはちゃんと私を見下している 3 好きだった好きすぎてもう苦しかった動機はそれでじゅうぶんだった 4 「『確かに』が『しかし』とセットな…
人は生を受けた瞬間から、終わりへと一方通行で向かう。夜空を彩る星々に比べたら、人間など本当にちっぽけな存在で、人ひとりの苦悩なんてきっと、些末なものなのだ。橋場詩織は本気で思っている、自分の人生なんて誰のかすり傷にもなら…