キャラメル売り

シナプスの存在しない場所に 私はいる 私がいる あられもない姿で (キャラメルを舐めながら) 横たわっている 銀紙をくしゃくしゃに 気の済むまで丸め終わった残骸が 私の心臓だったとして キャラメルを舐め終えた 甘ったるい…

1 大切なことは二度言う隠したいことは何度も言って誤魔化す 2 に、ん、げ、ん、は悲しい響き我慢して逃げないって言ってるみたい 3 獣から人に戻るときにまとうその切れ端でいいからなりたい 4 食べ物と暮らしています ぴー…

短歌 ですとろい

1   夢をみる夢からさめて夢のなか わたしは火星探査のとちゅう 2   標識に〈人に注意〉の表示あり 確かに気をつけなければならない 3   体温を測るたんびに季節とはうつろいゆくとデジタル表示 4   神さまが来ない…

歌集未掲載の歌

1 ハモニカが上手に吹けたそれだけであのころ呼吸も上手だった 2 さかあがりはじめてできた帰り道 お母さんの赤いマニキュアきらり 3 制服のポケットに隠したカッターを出せないままでもう三学期 4 夢 希望 みんな仲良く …

新春

息災をインクが告げる年賀状 老いた手で春待つ母の筑前煮 平等か良い子悪い子お年玉 初雪と消える初恋あわい窓 見上げれば祖母の微笑む冬銀河

短歌 前日

1 いちご味といちごは違うそれだけで絶望できた頃に戻ろう 2 レモンを家の本棚に隠して本当に爆弾になる半年後 3 青春はビタミンCが過剰です風邪を引いても平気なくらい 4 くしゃみして一歩だけ死に近づいてすぐに離れてそれ…

私の庭(という強制的沈黙)

遠くで破裂音がして 目が覚めた青い夜は 寂しくなってもいい 冷たい廊下を裸足で歩いて 自分の首を絞めようとして でもできなくて泣きました カチューシャが似合わなくなって 夢の国だけでワンピースを纏って どんどん静かになっ…

冬~春

約束が輝きを増す聖夜こそ 残り鷺孤独を辞書に刻んだか ゆく年に感謝を告げて涙明け 子どもらの秘密を知るよ雪だるま 鍋囲む笑い声まで美味い夜 目を閉じて心まかせてアゲハ蝶 散る花よいずれそちらへ口結ぶ 人は人思い知るのが卒…

短歌 忘れ物

1 伸びすぎた爪を切るとき残酷になりきれなくて過去が居残る 2 パーフェクト百点満点ですあとは欠けてゆくのを待つだけの刑 3 月見そば最初に黄身を潰すきみ なにが大事かわかっているの 4 光こそすべてであれと祈るひとまぶ…

1 はりつめたミルクの膜を破るときスプーンだけが知った背徳 2 飽きられたおもちゃを捨てるゴミの日に印をつけてあるカレンダー 3 クリスマス過ぎ去ったあと残されたサンタの脱衣を門松に刺す 4 平等は大切なこと死ぬことも生…