朝と蠅
そんな優しい旋律で私に構うのはやめてください。お願いだから独りにさせてください。冷めきったこの胸に温かい手など差し伸べないでください。 期待してしまうから。性懲りもなくまた信じてしまいそうだから。 そんな甘いお菓子で私の…
そんな優しい旋律で私に構うのはやめてください。お願いだから独りにさせてください。冷めきったこの胸に温かい手など差し伸べないでください。 期待してしまうから。性懲りもなくまた信じてしまいそうだから。 そんな甘いお菓子で私の…
1 (さよならを忘れたみたい)奇遇だね僕もどこかに落としたみたい 2 曇天を裂いたひかりをこめかみにあてて神さまごっこする午後 3 いつの日か同じ家路につけたなら今日の痛みも記念としよう 4 コーヒーに溶けたミルクをかき…
耐えて 耐えて耐えて耐えて 耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて ぷつん と ちぎれた糸は用無しになって ごみ箱に押し込められるけど 今のはあたしの神経ですから 編み直すので返してください (思い出は美化し放題! 二時間…
1 花ひらくそのモーションは容赦なくあたしを奪う 誰か助けて 2 優しさが崩れる瞬間(とき)に口走る「ごめんなさい」は脅迫として 3 朽ちた枝さえ必要とする虫がいる 生きるばかりのあたしよりもだ 4 「役に立つ」が礼賛さ…
1 蝶々がひらりひらりと好き・きらい 占うためにむしりむしりと 2 命とは思えないほど美しく命とは思えないほどに儚い飛翔 3 翅があればどこでも行ける気がしてた虫かご埋める元いのちたち 4 薔薇さえも朽ちるを知って手の中…
私が飛散したあとの地に 曼珠沙華がわらわらと咲きました 笑顔の老婆がひとつ手折って 経験値、経験値と呟いて 一輪挿しに収めます それを窓辺で見ていた少女が ごくんと喉を鳴らしたなら 真っ赤な花弁たちは一斉に 彼女を撃ち抜…
1 まばたきを忘れてました目の前できみがアイスのふたを舐めてて 2 線路沿いすすきが群れて揺れておりそろそろ壊れていいと気づく 3 ななめったパンタグラフが通過したあとに居残るあの日のふたり 4 坂道の頂にいてこの手には…
1 今日はまだ一人でいたい気分なの豪雨予報はいつも外れる 2 予報には誰かが降ると書いてありたぶん私のことなんだろう 3 低気圧ばかりが胸に去来してしととまぶたを濡らしてばかり 4 涙よりしょっぱいものがあるものか人はそ…
1 さなぎから孵れなかった者だけが曇天の日に笑ってもいい 2 黄信号でアクセルを踏むきみだからひとのむごさをよく知っている 3 助手席で雨の予報に気がついて横顔見るともう降っていた 4 写真館にて留められた「今」たちが手…
1 世紀末みたい金曜日の夜は(なかったことにできたならいい) 2 新宿にシンジュが隠れていることにもう意味がない すべてきらめき 3 西口のネオンサインの暗いとこ そういうふうに生きていけたら 4 本当は寂しいくせに「助…