短歌 粉々

1 手のひらに星を閉じこめ大丈夫いつかいつかと言い訳をする 2 風船が割れてしまったと泣く子のサンダルの下にバラバラの蝶 3 すすきの穂だらんと揺れて手まねきと認識をするぼくの瞳孔 4 すずなりのぶどうひと粒もぎるあの感…

1 骨だけの傘を広げ歩くきみのとなりでちゃんと泣いてる私 2 悪人(とされる)ひとが捕まってそれでも誰も救われぬ街 3 唇がそういう場所と知った日の麦茶の苦さを忘れられない 4 扇風機は居場所をなくしバラバラにされるとこ…

短歌 theザ座

1 今はただ瞳を閉じていたいんだ 流星群は夜空の自傷 2 夜空にも居場所がないので寂しさをきみの隣に置いておきます 3 光から逃れ逃れて部屋の隅 水槽の中で笑う夜光虫 4 振ってからコーラを開ける冒険に出ようきみから開け…

からから からん

からから からん からからからんからんからら つまらない音を立てて 私の骨が転がりました もの寂しい音を立てて からっぽのペットボトルの横に 私の骨は転がりました 名前を知らない蝶々が 私の心臓のふりをして ひいらひいら…

風鈴

1. ちりんちりんと軽やかな金属音が耳に心地よい。今日は少し風があるようだ。揺れる風鈴の姿こそ見えないが、季節が確実に巡っているのを感じることができる。風鈴はいつからあそこに飾ってあって、なぜ夏が過ぎても仕舞われないのか…

短歌 自由

1 水槽がひとつ置かれた部屋にある「自由」を喧伝するポスター 2 夏末期ああ自由へと発つために屋上の鍵を早くください 3 つけっぱなしのテレビとスマホを消せたら自分の停止ボタンも押せる 4 酷似したくらげは同じラベルを着…

短歌 包帯

1 夏が逝く ただそれだけを理由とし左手首の傷がふえてく 2 パスワード管理アプリのパスワードを忘れた 今日のお風呂はぬるい 3 もしきみが湯舟の底に沈んでも地球は回る 思い出として 4 美しいとはたぶんきみのこと/なら…

東京

1 ずぶ濡れになった私をからかってもらうつもりで傘を忘れた 2 秒針に月明かり降る秋が来る 私も好きにしていいかしら 3 駅前のおにくやさんのコロッケが今も恋しい東京暮らし 4 「寂しいね」寂しくないといえなくて「うん寂…

晩夏

1 正座してOasisを聴くひともいる 多様性って大事なんだな 2 ペンたてにネギ立てるのと泣き歌をほんとに泣いて歌うのやめて 3 「ベランダに蝉が突っ込みママが踏みました」絵日記でバレる凶行 4 光からお手紙ついた陰っ…

そら

1 一歩ずつ進んでいけばそれでよい誰もが空に裁かれている 2 足もとに蝉が転がる 雷鳴と明滅するあなたの横顔 3 雨ののちまた雨が降ることを知り炎天下さえ信じていない 4 真っ白なシャツにぽつんとついた赤いろはたぶんあな…