笹塚心琴 – ページ 68 – こことのこと

虫歯の国のアリス

やせ我慢を決め込んでいたけど、日増しに高まっていく歯の痛みに、芦花ありす（16歳、花の女子高生）は嫌々ながらついにその日、歯科医院のドアを叩いた。『ハートデンタルクリニック』という、街はずれにある小…

新宿駅のハンバーガーショップで、女子高生が二人、シェークを飲みながらダベっている。私の隣できゃいのきゃいの、実に楽しそうである。その日、仕事で嫌なことがあった私はやっかみにも近い感情で、彼女らを疎…

「君を、抱いていいの」まるで罪の告白、或いはあどけない脅迫。それは前奏のないポップスのように明け透けだ。私は許しを与えるように首を縦に振った。「本当に？」疑心暗鬼に支配された言葉。信じられない…

貴方が寝ぼけ眼で毎朝淹れてくれるコーヒーは、私にとって幸せの香りだ。駅前で買ってくるそれらは、専門店で挽かれてその場で真空パックされる。鮮度を保つために。私は、たまに貴方を真空パックにしたいと思う。…

11月25日（日）開催の「第二十七回文学フリマ東京」に出店します。ブース位置は【E-14】、サークル名は【rainbow lab】です。新刊は3冊を用意しています！詳しくは別記事にて。

人魚のことなんだがあいつは嫉妬深くて海の藻屑になって尚眼球だけは漂わせて王子様が老いてゆくその様を炯炯として睨み続けているのだ灰かぶりについては極彩色の復讐を企て新品のギターを買い …

「こことのこと。」へようこそ。ここは笹塚心琴（ささづかここと）の管理する、文章での表現を主にしたサイトです。楽しんでいっていただければ幸いです。詩、小説、短歌、エッセイなどをそろえております。…

世界の終わりのその後に、ふたりは朽ちた一軒家で小さなレストランをはじめた。決してお客さんは来ない。それでもふたりはキッチンに並び、残された時間を丁寧に暮らしている。「コロッケは意外と、手のかかるメニ…

オーケストラの演奏が零時ぴったりに見事にフィニッシュし、拍手と歓声と派手な花火の演出が、2018年の始まりを告げた。「あけましておめでとう」私が言うと、彼はあくびをしながら「うん」とだけ応じた…

2017年が終わる。年の瀬に、実家に帰ってこなくていいと言われた私たちは、二人きりでの年越しを過ごすことになった。年末の買い物を終え、帰り道で私たちはわざと遠回りをして、最寄駅の踏切道の前で立ち止ま…