短歌 パンタグラフ

1 まばたきを忘れてました目の前できみがアイスのふたを舐めてて 2 線路沿いすすきが群れて揺れておりそろそろ壊れていいと気づく 3 ななめったパンタグラフが通過したあとに居残るあの日のふたり 4 坂道の頂にいてこの手には…

短歌 予報

1 今日はまだ一人でいたい気分なの豪雨予報はいつも外れる 2 予報には誰かが降ると書いてありたぶん私のことなんだろう 3 低気圧ばかりが胸に去来してしととまぶたを濡らしてばかり 4 涙よりしょっぱいものがあるものか人はそ…

短歌 雨

1 さなぎから孵れなかった者だけが曇天の日に笑ってもいい 2 黄信号でアクセルを踏むきみだからひとのむごさをよく知っている 3 助手席で雨の予報に気がついて横顔見るともう降っていた 4 写真館にて留められた「今」たちが手…

短歌 新宿再び

1 世紀末みたい金曜日の夜は(なかったことにできたならいい) 2 新宿にシンジュが隠れていることにもう意味がない すべてきらめき 3 西口のネオンサインの暗いとこ そういうふうに生きていけたら 4 本当は寂しいくせに「助…

短歌 粉々

1 手のひらに星を閉じこめ大丈夫いつかいつかと言い訳をする 2 風船が割れてしまったと泣く子のサンダルの下にバラバラの蝶 3 すすきの穂だらんと揺れて手まねきと認識をするぼくの瞳孔 4 すずなりのぶどうひと粒もぎるあの感…

1 骨だけの傘を広げ歩くきみのとなりでちゃんと泣いてる私 2 悪人(とされる)ひとが捕まってそれでも誰も救われぬ街 3 唇がそういう場所と知った日の麦茶の苦さを忘れられない 4 扇風機は居場所をなくしバラバラにされるとこ…

短歌 theザ座

1 今はただ瞳を閉じていたいんだ 流星群は夜空の自傷 2 夜空にも居場所がないので寂しさをきみの隣に置いておきます 3 光から逃れ逃れて部屋の隅 水槽の中で笑う夜光虫 4 振ってからコーラを開ける冒険に出ようきみから開け…

からから からん

からから からん からからからんからんからら つまらない音を立てて 私の骨が転がりました もの寂しい音を立てて からっぽのペットボトルの横に 私の骨は転がりました 名前を知らない蝶々が 私の心臓のふりをして ひいらひいら…

風鈴

1. ちりんちりんと軽やかな金属音が耳に心地よい。今日は少し風があるようだ。揺れる風鈴の姿こそ見えないが、季節が確実に巡っているのを感じることができる。風鈴はいつからあそこに飾ってあって、なぜ夏が過ぎても仕舞われないのか…

短歌 自由

1 水槽がひとつ置かれた部屋にある「自由」を喧伝するポスター 2 夏末期ああ自由へと発つために屋上の鍵を早くください 3 つけっぱなしのテレビとスマホを消せたら自分の停止ボタンも押せる 4 酷似したくらげは同じラベルを着…