反転
反転した! 何もかもが 私に断りもなく反転した! 敵だと思っていたミーコちゃんは猫だった 好きだと疑わなかったコーラは無害だった ヒットチャートが上から紹介されていき 無関心こそが愛であったと息を絶やして 神様から順番に…
反転した! 何もかもが 私に断りもなく反転した! 敵だと思っていたミーコちゃんは猫だった 好きだと疑わなかったコーラは無害だった ヒットチャートが上から紹介されていき 無関心こそが愛であったと息を絶やして 神様から順番に…
1 死にたさは生きたさですと教科書に載っていたから絶対に嘘 2 階段が天国にまで続いててああよかったなって一歩踏み出す 3 目の前を通過列車が過ぎてってあたしのこころだけ轢いてった 4 帰り道赤信号だけを選んで歩いたけれ…
1 ふりこって誰がどうあれあるがままふれているから羨ましいな 2 心臓の奥の奥より奥のほう 君が粗末に捨てたまごころ 3 優しさは流行らないから味のないガムを選んで渋谷を歩く 4 ふたりして爪を噛むからふたりしてひとりぼ…
私が覚悟を決めあぐねているうちに、あなたは新宿駅の新南口からよく見える位置の植え込みで全身を電球と電線で巻き付けられて、寒くなれば空気の冷たいほうがイルミネーションがよく映えるんだよと付き合いたてのカップルが恥じらいなが…
やせがまん モンブランまで敵とする 口笛を聞いてくれるよ秋の雨 もうドアを閉じてしまうね吾亦紅 突き詰めて結ぶりんどうの紫 お願いよ海猫帰るまでここに さよならがなぜに尊い藍の花 愚かさに輪をかけてゆく夕化粧 …
寝過ごして出会う高尾の山紅葉 台風はため息までも奪ったか 生秋刀魚 次会う時が百年目 銀杏が隣で爆ぜて緩む頬 焼き鳥が旨いお店の名が花鶏 秋桜と生き急ぐのを競いあう 冬支度 母となれない虚しさと
なぜかしらあなたは私にあまねく了解可能な理由の明示を迫ってくる。そんなものは仮に存在してもおおむね嘘なので「冬か来る前にあなたへ手紙を宛てるんです、奥多摩の小さな美術館の隅に飾ってもらえるよう」と柔らかく抵抗すると、あな…
悲しい時ではなくて 嬉しい時に叫びたい 嫌な時には嫌なんだと 嬉しい時には嬉しいと 心のままにころころと 幼いころなら全身で伝えることができたことを 臆病さの染みた鈍色の瞳が拒絶してしまうから 私はこのごろは鏡を見ること…
彼はまるで宣言するように言った。 「本当は僕には、人を愛する資格なんてないのかもしれない」 「どうしてそう思うの?」 私がストレートにそう問うと、彼は一瞬だけ口ごもってから、 「……笑わない?」 私は真剣に頷いた。 「笑…
夜の新宿で待ち合わせた。あの日と同じ、霧雨だった。 東口のアルタ前で春色のワンピースを着て、歩きやすいようにヒールの低めのパンプスを履いて、緑色の傘をさして立っていた。 カバンには、先日彼が残した一枚のメモ帳が入っている…